2017 Fiscal Year Research-status Report
Invention of active morphing smart surface created by additive manufacturing
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17K14577
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村島 基之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70779389)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スマートサーフェス / 摩擦制御 / 乾燥摩擦 / 接触 / 接触面積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,表面が変形するという申請者が開発した新しい構造を用いることで,これまでにない能動的な摩擦制御を可能とするスマートサーフェス材料の創製を目的とする.また,評価・計測を通じた摩擦変化メカニズムの解明を通じて最適設計指針の提案を行う.2017年度の研究成果として,3Dプリンタを用いて試作したスマートサーフェスを用いることで摩擦係数を0.3から1.0まで能動的に変化させることに成功した.また,変形量を調整することで摩擦係数を多段階に変化させることができることが明らかとなった. スマートサーフェス変形部の凸変形量が増加するに従い,相手ガラス面との接触面積が減少する傾向が明らかとなった.これは,表面形状測定の結果より,凸変形量が大きくなるにつれ接触部の曲率が低下することに起因することが明らかとなった.加えて,この接触面積の減少とともに摩擦係数が増加するという関係も明らかにされた.この摩擦係数の増加現象は「摩擦係数は見かけの接触面積に影響されない」というアモントン・クーロンの法則とは異なる結果である.一方で,3Dプリンタで用いられた樹脂材料の摩擦係数は温度上昇による材料強度,粘弾性特性の遷移により変化することが知られている.測定された接触面積及び摩擦係数を用いて摩擦温度を計算した結果,高摩擦係数1.0を示した条件では,接触部温度がガラス転移温度まで上昇していることが確認され,3Dプリンタで作られたスマートサーフェスの摩擦制御メカニズムが温度変化によるものと示唆された. これらの研究成果は,2017年度に独自開発したスマートサーフェス用摩擦中接触状態その場観察装置を用いることにより初めて得ることが可能となった.本研究では,摩擦の能動的制御を行っただけでなく,そのメカニズム解明も進んでおり,他の摩擦制御手法開発指針や効率的なスマートサーフェス設計指針の提案を行うことが可能である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年度の研究成果により,0.3 MPaの圧縮空気を用いても破壊が生じず,表面が変形するというスマートサーフェスの設計を達成した.具体的には,有限要素法によって示唆された変形に最適な寸法を基に,実際に3Dプリンタを用いて様々な寸法の試験片を試作した.これらの試験片の実際の変形量を測定することにより,変形部の形状がφ6 mm,肉厚0.2 mm,曲率25 mmであるものが最適であると明らかにした.この設計を用いることで最大700マイクロメートルの表面変形を達成した. 2017年度には,スマートサーフェス用摩擦中接触状態その場観察装置を申請者が独自に開発・製作した.当初の予定では年度内に本摩擦状態その場観察装置の製作完了・試運転を目指していたが,完成後の実験および接触面測定結果により,スマートサーフェスの摩擦制御性が明らかにされた.加えて,摩擦部温度による摩擦制御メカニズムまで示唆された.これらの実験は短時間に行われたにも関わらず,メカニズムの考察まで達成するなど非常に優れた成果を上げることができた.そのため,今後も優れた研究成果の達成に本摩擦試験機が大いに貢献すると考えられる. 当初は2018年度に製作・試験を実施する予定であった「多数の変形部の独立制御による摩擦制御」に関して既に装置の開発に着手している状態である.Labviewを用いた制御プログラムの開発にも着手しているため当初計画以上に進展がみられる. 加えて,当初は予想していなかった流体中の摩擦においてもスマートサーフェスによる摩擦制御特が可能性であるという実験結果を既に取得している.この結果は,一般的に生じうる「乾燥」または「潤滑」のどちらの接触表面であってもスマートサーフェスが摩擦を制御することが可能であると示唆するものであり,本研究テーマの工学的な重要性をさらに示すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の大きな成果としては,「スマートサーフェスによる能動的摩擦の制御が達成された」ことと「接触状態の変化によるによる摩擦面温度の上昇が摩擦制御に寄与していることが示唆された」ことの2点である.一方で摩擦制御メカニズムに関しては,スマートサーフェス変形部が薄肉のダイアフラム構造であり,真実接触面積が変形状態によって異なるため摩擦係数が変化しているという可能性が残されている.そのため,今後は摩擦制御メカニズムの解明に向けて,温度で摩擦係数が変化しない材料を用いたスマートサーフェス試験片の製作および形状変形と摩擦係数の関係を明らかにする.具体的にはこれまで申請者が開発してきた,初期曲率を有するダイアフラム構造を適用した薄肉金属を用いたスマートサーフェスの製作に取り組む.そして,その摩擦係数の制御性を確認することでスマートサーフェスによる摩擦制御メカニズムの解明に挑戦する. 当初の研究計画に基づいて,多数の変形部を有するスマートサーフェスのそれぞれの変形部の変形を独立に制御することによる摩擦制御手法の確立に挑戦する.これが達成されることにより例えば,接触部に異物などが混入した際にその異物を避けるように変形が伝播するような革新的な接触状態制御が可能となる.また,温度変化などにより潤滑状態が絶えず変化するような状況においても常に最適な摩擦係数を維持できるような,摩擦係数のリアルタイム測定および変形量のフィードバック制御技術の確立に挑戦する.これらのフィードバック制御はLabviewプログラムを用いた機械学習を用いて達成に挑戦する. これらの研究を通じて,学問的には薄肉構造材料の摩擦特性の解明という新しい課題への挑戦を,工業的には汎用的な金属材料を用いたスマートサーフェスの開発およびその摩擦制御技術の開発を行う.
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Research Products
(8 results)