2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel plasma water purification device by measuring a spatiotemporal concentration change
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17K14585
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上原 聡司 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (70742394)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プラズマ / 水質浄化 / 化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放電を用いた水質浄化法や医療応用の実用化に向けて必須である、エネルギー効率の改善を目的としている。放電に伴い生成するプラズマを液体界面に作用させ,その化学的反応性を用いて水質浄化,医療および材料改質などを行う研究が盛んに行われているが,未だにエネルギー効率の観点から汎用的な応用化が困難な状況にある.初年度は特に、水質浄化と医療応用において共通して重要な放電と液界面の相互作用および放電時の液体内部流動を計測する実験系を構築し、ハイスピードカメラによる計測結果の解析を行った。以下に本年度得られた結果を示す。 1. 放電に対する局所的な内部流動を明らかにするため、液膜内の流動を二次元的に制限し計測する針電極-液膜放電装置を開発した.放電時の内部微小領域の流動をハイスピードマイクロスコープにより高速で計測しPIVにより解析した。 2. 液相内での放電と気泡挙動の関係の応用として、これまで開発していたキャピラリー放電装置を応用し,複数管による高効率放電装置の開発を行った。放電効率の観点からデバイスを評価するために、統計的手法を用いた評価法を構築した。 3. パルス電圧を印加することで液相中での気泡生成および生成気泡維持に使用されるエネルギーを削減するキャピラリーパルス放電法を開発した。放電は基本的に気相中で生成されるため、気泡生成に必要な最小限のバイアス電圧を印加し,極小時間のパルス電圧を印加することで、高効率の放電が可能であることを明らかにした。またその時の内部流動を計測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
放電により生成するプラズマ中のラジカルなど、化学的反応性の高い化学種を溶液中の難分解性有機物や細菌などに作用させることで水質浄化を行うことができる。このとき、生成した化学種は気液界面を通して作用するため、気相中および液相中の流動を明らかにすることが非常に重要である。放電時には静電的な作用により液界面が変形することや熱による気泡生成の影響など放電部近傍の流動計測は困難である。そこで申請者らは放電スポット系に対して厚さの十分に薄い液膜端に針電極からの放電を作用させる実験系を構築した。これには、液体の表面張力を用い、厚さ1 mm以下で片側が大気に開放されている液膜を実現した。この実験装置により、内部の流動が二次元的になりPIVによる解析が可能となった。実験解析の結果得られた流動速度は、拡散係数および化学種の寿命から推定される代表拡散距離と比べても同等のオーダーであることが明らかにされた。 また、プラズマ水質浄化デバイスの開発に向けた、高効率に放電を行う複数管放電デバイスの開発を進めた。本研究のテーマである時間依存性を明らかにするため,放電をハイスピードカメラにより計測し、放電時間を確率密度関数として表す評価法を確立した。 さらにこれまで放電には直流電圧を用いていたが、気泡生成に多くのエネルギーが消費されることが明らかになった。そこで気泡生成に必要な最小限のバイアス電圧を印加し、パルス的に放電電圧を与える、キャピラリーパルス放電法を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、液膜内における放電点近傍の流動が明らかにされた。今後はデバイス開発へ向け、細管内部の気泡界面近傍での内部流動の計測を行う。そのために液膜実験で得られた知見を細管内の流動計測に応用する。特に申請者はこれまで管内気泡挙動の解析を行うアルゴリズムを開発しているため、それを用い、気泡挙動およびそれに伴う内部流動を明らかにする。これまでの計測で、直流電圧を細管に引加した際、管内での放電は数Hzから数十Hzオーダーで繰り返し生じていることが分かっている。この周期は、放電に伴う気泡の細管からの排出により、再び管内が液体で満たされ、加熱される時間に依存する。そのため最長で数百fpsという比較的低速度の計測と、放電の瞬間に着目した高速度の撮影を行い、統合的に解析を進める予定である。この時間スケールの差は、通常計測を困難にする。これまでの研究で開発された、バイアス電圧とパルス電圧を組み合わせる新奇な方法により、放電周期を制御できるため、計測の精度を高めることができる。 また、この新たに開発されたキャピラリーパルス放電法の効率を定量的に評価するためモデル溶液の分解実験を行う。これには、申請者らが使用経験のあるメチレンブルーや酢酸を導入する予定である。ここで得られるのは、化学的計測によるものなので、平均化された情報である。本研究で目的としている時間および空間的な依存性を明らかにするため、これまでに構築した統計的な放電評価法を応用し、さらなる解明を目指す。これまでは解析速度の問題があったが、アルゴリズムの高速化を進めているためさらに大量のデータから情報を抽出できると期待される。
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Causes of Carryover |
(理由)予定していたよりも少ない材料費で実験装置の構築および条件出しが完了したため。 (使用計画)初年度の実験でキャピラリーパルス放電が新規に開発された。また、放電効率は細管長さに依存することもわかっている。開発されたキャピラリーパルス放電法をより効率化するために管長さの異なる実験系をさらに構築するための消耗品購入に使用する予定である。
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