2017 Fiscal Year Research-status Report
空間平均理論による粗面乱流輸送機構の解明と壁面摩擦抵抗の予測に向けての革新的研究
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17K14591
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
桑田 祐丞 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40772851)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 粗面乱流 / 格子ボルツマン法 / 直接数値解析 / 乱流モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
粗面に生じる摩擦抵抗と粗面構造との関連性を調べるために,格子ボルツマンGPU-CPU並列計算プログラムを用いて,複雑粗面乱流の直接数値解析を実施した.粗面を代表するパラメータである根二乗粗さ高さ・ひずみ度を変化させて数値的に生成した不規則粗面と,塗料粗面の2つのタイプの粗面を用いた解析を行った.解析はD3Q27多緩和時間格子ボルツマン法と不均衡局所細密格子法を組み合わせて行った.基本的な乱流統計量である平均速度分布・レイノルズ応力分布のデータに関して,過去に実験的に計測されたデータと見比べて,得られたデータの妥当性の検証を行った後,空間平均運動量式・乱流方程式の収支解析を行った.その結果,根二乗粗さ高さの増大とともに粗面に生じる圧力抵抗が増大し,摩擦抵抗は増大することが確認された.また,ひずみ度が負から正に変化すると,乱れの生成がより活発になり,摩擦抵抗が増大することが分かった.これらの傾向をもとに摩擦抵抗を予測する相関式の構築を行い,文献データとの比較を行ったところ,複雑な構造を有する実在粗面においても予測式の有用性が確認された. また,粗面上部の流動を低コストに予測する粗面モデルの構築を試みた.空間平均理論を用いて,粗面が存在することによって生じる運動量式の付加項を導出し,粗面によって生じる圧力抵抗を粗面領域の空隙率・等価直径によってモデル化した.構築したモデルの解析結果を直接数値解析の結果と比較し,モデルは粗面乱流の特徴をよく再現できることを確認した.また,乱流方程式の収支解析を行うことで,構築したモデルが実際の物理現象をどのように再現するのかを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は格子ボルツマンGPU-CPU並列プログラムを用いて,複雑粗面乱流の直接数値解析を実施し,粗面を代表するパラメータである根二乗粗さ高さ・ひずみ度などの粗面パラメータと乱流摩擦抵抗の関連性の調査を行うことが当初の計画であった.これらの解析はその大半を終えることができ,乱流や運動量輸送解析などの詳細な解析も実行することができた.さらに,実在粗面を扱う解析・高レイノルズ数解析も進めることで,より複雑な構造を有する実在粗面に関する議論を進めるができ,今後のモデル開発のために多くのデータを蓄積することができた. また,これらのデータを用いて,空間平均理論を用いた粗面モデルの開発(当初の計画では平成30年度以降の課題)を進め,モデルの暫定的な構築をおこなった.構築したモデルは,限られた粗面に対してでしか評価は行えていないものの,モデルは十分な予測精度を持っていることを確認した.上記の理由からも,本年度に得られた成果は当初の計画以上であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,粗面を代表するパラメータである根二乗粗さ高さ・ひずみ度の調査を行った.粗面パラメータである根二乗粗さ高さとひずみ度の影響の調査を本年度はおこなったが次年度は,さらに高次の粗面パラメータであるとがり度の影響を調査する.具体的には,根二乗粗さ高さとひずみ度を一定として,とがり度を変化させた粗面を数値的に生成し,格子ボルツマン法を用いた直接数値解析を実行する.また,前年度に引き続き,よりレイノルズ数の高い条件で粗面乱流の直接数値解析を行い,粗面に生じる摩擦抵抗のレイノルズ数依存性に関する調査を進める. 粗面乱流を低いコストで解析するため粗面モデルの構築は本年度におおむね完了したが,様々な種類の粗面に対しての汎用性は調べられていない.そこで,次年度は様々な種類の粗面の直接数値解析データをもちいて,構築したモデルのさらなる評価を進める.また,粗面乱流解析のさらなる低コスト化にむけて,空間平均に加えてレイノルズ平均を施す2重平均理論を基にした粗面乱流モデルの開発も進める.
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