2018 Fiscal Year Research-status Report
ラグランジュ型シミュレーションによる細胞の透過・吸着ダイナミクスの解明
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17K14592
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大友 涼子 関西大学, システム理工学部, 助教 (00726862)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 繊維層 / 移動特性 / Stokes flow / PRPフィルター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,繊維層中を流れるマイクロ粒子の挙動を詳細にシミュレートすることで,複雑な繊維層の構造が粒子の移動特性に与える影響を明らかにすることを目的とする.特に多血小板血漿(PRP)作製のためのフィルターによる濾過プロセスを念頭に置き,それらを通して,粒子の繊維への付着および移動現象の解明を目指す.平成30年度は「細胞が分散した溶液の繊維層中の流動解析」を主として行った. 繊維への細胞粒子の付着を表すために,繊維-粒子間に作用する力の再検討をした.前年度に検討したvan der Waals力,静電気力に加え,血小板とPRPフィルターの間に作用する力について文献調査を行った.PRPによる分離プロセスでは,流体中に血小板以外の血球成分も含まれるため,それらを用いた実験等も行った.血小板と血管壁の間に作用する力のモデルはいくつか見つかったものの,PRPフィルターに関連した情報を得ることはできなかった.また,市販のPRPフィルター中で血小板および血球の透過挙動を観察することが可能かどうかを検討するために,マイクロスケールの装置を自作したが,期待した成果は得られなかった.このため,化学・生物学的な引力による吸着よりも先に,まずは流体力学に基づく細胞粒子挙動を丁寧に再現し,繊維の隙間に細胞粒子が捕捉される現象に着目して,細胞粒子のサイズの効果を議論することにした. 細胞粒子のサイズに数倍のオーダーの幅がある場合に,粒子が繊維に妨げられることによって捕捉される現象をStokesian dynamics法によって再現した.従来の計算コードでは繊維と粒子の半径が等しいという前提のものであったが,任意の半径を与えられるように拡張した.新しい計算コードの妥当性を確認した後,粒子サイズの異なる条件で解析を行い,繊維層内部を通過する際の粒子挙動の違い,および捕集されやすさの違いについて考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,「細胞が分散した溶液の繊維層中の流動解析」が目標であった.血小板および白血球の繊維への吸着過程の再現には至らなかったが,まずは流体力学に基づく細胞粒子挙動を丁寧に再現し,繊維の隙間に細胞粒子が捕捉される現象を明らかにすることにした.Javadpour and Jeje (2012)によると,PRPフィルターの繊維と血小板の半径は同程度であることが報告されているが,分離プロセスでは血小板よりもサイズの大きな血球成分も存在する.このことから,細胞粒子のサイズに数倍のオーダーの幅がある場合に,粒子が繊維に妨げられることによって捕捉される現象をStokesian dynamics法によって再現した.前年度までに,繊維層を球形粒子の集合体でモデル化し,内部の流動場を解析する計算コードを作成したが,その中では粒子径を一定値として扱っていた.当該年度は,粒子径を粒子毎に異なるパラメータに変更した計算コードを構築した.まずは粒子が少ない場合についてStokes流れの特徴である対称性などを確認し,妥当性を検証した.次に,粒子モデルで表した繊維層内部に流体が満たされている場合に,細胞粒子が移動する現象をシミュレートした.計算結果から,細胞粒子のサイズによって,繊維に妨げられて捕集される細胞粒子の数,および繊維層内での細胞粒子の挙動が異なる傾向が示唆された.粒子の挙動として,特に個々の粒子の速度の違いや粒子群全体の拡がりに着目し,定量的な評価と考察を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に実施予定であった「細胞サイズが移動特性に与える影響」については当該年度に達成済みである.一方で,「繊維への細胞の付着判定」については当該年度に達成できなかったため,次年度にも引き続き検証を行う.それ以外の研究内容については,当初の計画通り,令和元年度には「繊維層の構造が内部の細胞の移動特性に与える影響」に取り組む予定である.繊維層の形状および体積率が及ぼす影響については,当該年度に完成させた計算コードをアレンジすることで解析可能であると期待される.繊維の形状は,現状は直線状の繊維層を対象としているが,屈曲したより複雑な形状の繊維層に対しても解析し,内部の粒子の挙動に与える効果を明らかにする.繊維の体積率については,フィルター繊維を意図して1%~7%程度の範囲に設定する.令和元年度は最終年度であるため,これまでの結果を整理し,国内外の学会発表や論文投稿にも重点的に取り組む.
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Causes of Carryover |
数値計算のためのワークステーションを購入予定であったが,大規模計算まで至らなかったため,現有の機器で対応することにして今年度は購入を見送った.その代わりに,比較的高性能のPCとコンパイラを複数個購入し,計算の効率化を図った.これらはワークステーション購入のために計上した金額に満たなかったため,残高が生じた.それ以外についてはほぼ予定通りの金額を使用した. 令和元年度は最終年度であるため,国内外の学会発表および研究成果の投稿のための費用をこれまでよりも多めに計上している.また,数値計算結果との比較のための実験に必要な消耗品の購入も予定している.
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Research Products
(6 results)