2017 Fiscal Year Research-status Report
Droplet mobility control using the microstructure modified by magnetism
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17K14602
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山田 寛 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (60758481)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液滴輸送 / Breath Figure法 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度においては,まずBreath Figure法により微細な細孔を持つ膜の作製を試みた.この方法はポリマーを溶かした溶媒の蒸発と同時に空気中の水分子が凝縮し,これが溶媒とは混ざらず液滴としてポリマー上に並ぶことで,最終的に細孔を多数有するポリマー膜を得るものである.そのため,雰囲気の温度と湿度の条件を整える装置を作製した.作製時には,温度や湿度,ポリマーの濃度,購入したプラズマ処理装置を用いてポリマー溶液をキャストする固体面を親水性にするなどの調整を行うことで細孔膜を安定的に作製することができた.ここに磁性を持つFe3O4ナノ粒子を混合したポリジメチルシロキサン(PDMS)を流し込み,購入した真空加熱炉で脱気しながら加熱することでPDMSを硬化させた.次に細孔膜を除去することで微細な球形構造をPDMSに転写できることを確認した.このことはレーザー顕微鏡を用いて観察しており,PDMS全体が磁力に反応することも確認している.しかしながら,PDMSの微細構造上に液滴を置いた状態で磁石を近づけても液滴だけ動くことは確認されなかった.これは,作製した構造が小さく変形しにくかったためと考えられる. そこで,本研究のコンセプトを実証するため,ミリスケールの構造で確認することとした.ここでは水に溶解させたゼラチンに直径1mmの銅線を刺した状態で硬化させた.その後に銅線を抜き取り,そこにPDMSを流し込んでPDMSを硬化させた後,ゼラチンを除去することで突起形状を転写した.得られた構造はミリスケールであるため液滴を乗せることはできなかったが,直径5mm程度の固体を乗せて磁石を近づけたところ突起形状が変形し固体を動かすことができた.これにより,本コンセプトを実証することができたが,本来の目的である液滴の輸送を行うため,磁力によって変形しやすい微細構造を作製する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画ではBreath Figure法により表面を作製して型として利用する予定であった.この手法により安定的にマイクロスケールの孔をおおよそ等間隔で作製することができた.次にPDMSを流し込んで硬化させることで構造の転写にも成功した.しかし,磁力に反応することによる構造の変形や,それによる液滴の輸送を観察するには至らなかった.そこで,この研究のコンセプトを実証するべく,スケールの大きな針状構造を作製した.ここでは直径1mm程度の銅線をゼラチンに刺し,ゼラチンが硬化した後引き抜くことでできた穴にPDMSを流し込んで構造を作製した.そのため,液滴を乗せることはできなかったが,紙片などを置いた実験では,磁力による構造の変形によって上に乗せたものを動かせることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
方針としては,安価で大面積作ることを目標にしていることもあるため,微細加工技術を使わない手法を模索する.これまでの経験から,厚さが1mmを下回る薄いPDMS膜では磁力によって変形しやすいことがわかっている.そのため針状の構造ではなく,膜状の構造が間隔をあけて並んだ構造の作製を目指す.そこで現在,カッターナイフの刃が構造の方として利用できないかと考えており,刃を多数重ねたものを型としてPDMSに転写することには成功している.またこの面においては,直径1mm程度の液滴を乗せることができることも確認している.今後は刃の厚さやPDMSの柔らかさを調整することで,等方的ではないものの磁力に反応して変形する構造を実現し,それによる液滴輸送の制御を確立していく予定である.
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Causes of Carryover |
昨年度はミリスケールの構造では磁力を近づけることによる変形を確認できたが,微小な突起の観察には至らなかった.これは,作製した試料が磁力によって変形することによる液滴輸送が観察できなかったためである.本来は,学内の共用施設において変形前後の表面構造等を観察する予定であった. 平成30年度は変形の度合いと磁力の強度の関係を明らかにするため,簡易的な磁力測定装置を導入する予定である.また,学内施設を用いた試料の観察も同時に行っていく.
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