2017 Fiscal Year Research-status Report
Highly Accurate Measurement and Molecular Dynamic Simulation on Capitally Constant for Environmentally Benign Next Generation Refrigerants
Project/Area Number |
17K14603
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
近藤 智恵子 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50752870)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地球温暖化防止 / 表面張力 / フロンガス / 分子動力学シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
冷凍・空調機器の作動流体である冷媒にはフロンガスが多く用いられている.ルームエアコンに最もよく用いられる冷媒の地球温暖化係数は675と非常に高く,この係数が低い物質へ変更することが急務となっている.そこで本研究では,新規に合成がなされた地球温暖化係数が1程度と非常に低い物質を取り上げ,相変化伝熱過程を支配する最も重要な熱物性の一つである表面張力の,高精度測定と分子動力学シミュレーションによる予測を行う. 本年度は,3本の毛細管で測定を行うことで精度を向上させた,示差毛管上昇法によってR1123(F2C=CHF)の表面張力を温度範囲265 K~305 Kで測定した.再現性確認のため,サンプルを入れ替えて3回測定を実施した.測定誤差は±0.25 mNm-1であり,3回の測定結果はその範囲内で一致していることから,再現性も十分であることを確認した.この測定結果を基に,van der Waals型の予測式を提案することができた. σ=61.02 x 10-3 (1-T / Tcrit) [ Nm-1] 上式中のTcritは,R1123の臨界温度 331.7 Kであることを示す.さらに前倒しで,混合冷媒R1123/R32も測定を行うことができ,その結果は来年度学会等で公開予定である. 一方分子動力学シミュレーションでは,無重力無限平面の気液界面を模擬して表面張力の解析を試みた.まずは比較的分子間力が大きく気液界面を維持しやすいため計算が易しいと思われたOctaneでの解析を試みた.分子内ポテンシャルはOPLSを用いて計算した.物性計算ソフトREFPROPとの比較を行ったところ,解析結果のほうが20から30%高い値となったが,温度に対する変化には定性的な一致が見られた.今後は,分子内ポテンシャルの再計算,解析領域と時間平均領域の拡大などによって精度向上を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,今年度,測定装置の設計製作と,既存物質の測定による測定精度の確認,さらに新物質R1123の測定が予定されていた.そこで毛細管3本を用いる測定装置を製作し,R32やR134aといった既存物質を測定することで,測定の健全性を十分に確認することができた.また,提供された新物質R1123の純度が非常に高いものであった事も幸いし,3回の測定に測定誤差以上の偏差は現れず,安定した測定結果を得られることが出来た.そこで来年度実施予定であった混合冷媒R1123/R32の測定に着手することが出来た.現在のところ組成比,62.9/37.1 mass%, 51.9/48.1 mass%, 39.3/60.7 mass%, 19.0/81.0 mass%での測定が終了しており,順次学会や論文等で結果を報告する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
高精度測定では,今年度に引き続き混合冷媒R1123/R32の測定を実施し,組成の表面張力へ及ぼす影響を把握する.また測定結果から組成の影響を加味することが出来る簡易予測式をR1123/R32に対して提案する. 分子動力学シミュレーションでは,これまで分子内ポテンシャル計算に使用してきたソフトウェアOPLSに加え,別のソフトウェアAMBERでの計算を試みる.これらの結果を比較し,実測結果に近い値が与えられるポテンシャルを採用することとする.また解析対象の物質は,Octaneに代わり,冷媒のように沸点の低い物質で尚且つ表面張力の値も精度良く測定されているエチレン等の表面張力解析へ挑む.エチレンは今回の対象物質と同じく不飽和結合を1つ有する物質であることから,計算対象として適すると考えられる.
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