2017 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤分子の自己集合によるトムズ効果メカニズムの分子論的解明
Project/Area Number |
17K14610
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
荒井 規允 近畿大学, 理工学部, 講師 (80548363)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 界面活性剤水溶液 / 自己集合 / 分子シミュレーション / 並列化 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,プログラムの拡張とそれらの妥当性の確認,およびシステムの構築を行った.まずプログラムの開発として,これまでの研究において分子シミュレーションの基本的なプログラムは開発済みであったため,具体的には,システムに流れを発生させ,非平衡状態のシミュレーションを行うための方法を導入した.これまで管内(ポアズイユ)流れを発生させる方法は,分子に強制的に外力を与える方法が一般的に用いられており,広い速度範囲で安定した分子シミュレーションを行うことができなかった.近年提案された境界条件に密度勾配を与える方法を実装した. また現実により近く,妥当性のある結果を得るためには巨大な系と長時間のシミュレーションを行い,十分な統計量を得ることが必要である.本プログラム開発では,OpenMPによる並列化コードを作成しシミュレーションの高速化を行った.また,高速化手法のひとつであるFDPSを導入は引き続き取り組んでいる. 開発されたプログラムコードを使用し,管内流れの分子シミュレーションを行った.速度分布,流量,圧力分布を計算することで,安定した管内流れが再現できていることを確認した.さらに過去に行われた実験条件を参考としたシミュレーションも行った.界面活性剤の添加の有無や濃度依存性を確認し,実験と同様の傾向が得られていることを確認した. さらに結果を拡張し、壁面の化学的な相互作用や管内の流速を変化させることで,管内の界面活性剤の集合構造が変化し,ある程度の粘度が制御できることを示した.この結果は投稿論文としてすでに発表されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたプログラム開発・拡張とシミュレーションモデルの作成は順調に進めることができた.さらにそれらの妥当性もおおよそ完了している.プログラムコードの高速化は一部現在も取り組んでいるが,それについては研究計画当初から,随時開発を行うことを予定していた.コード開発に加え,壁面の相互作用と界面活性剤水溶液の集合構造の変化,それによる粘度制御についての投稿論文を出版することができたため,計画以上に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
プログラムコードの開発,特にFDPSフレームワークを導入した高速化は引き続き行う予定である.これまでに管内流れを分子シミュレーションで再現することが可能となったため,これをもとに,トムズ効果発現の分子論的な原因を明らかにする. 具体的には,過去の研究を参考にして,壁面の化学的な相互作用,界面活性剤のサイズ,流速等の原因となることが予想されるパラメータを変えたシミュレーションを行い,抵抗低減率を測定する.ミセルのサイズや形状,棒状ミセルの配向性や伸び,界面活性剤分子の親水性の違いを軸とした抵抗低減率の相図を描き,どの因子が影響しているのかを明らかにする.また,集合体だけでなく円管の方にも着目し,円管の半径や化学的な相互作用なども検討することを予定している.
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Causes of Carryover |
旅費や謝金(主に英文校正を予定していた)については,ある程度の成果が得られたものの,代表者が取り組んでいるその他の研究と同時に発表や研究討議を行ったため,そちらで獲得している予算から支出した.研究相談や発表,論文発表は当初の予定通りであったが,結果として使用額に差異が生じた.
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