2017 Fiscal Year Research-status Report
ロボティックスワームの群れ行動解析に基づく運用支援システムの構築
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17K14627
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
保田 俊行 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (60435451)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スワームロボティクス / 群れ行動生成 / 群れ行動解析 / 進化ロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,スワームロボットシステムの群れ行動解析を通した協調行動に潜むメカニズムの解明,およびその知見を基とした高い適応的タスク遂行能力を持つ群知能システムの構築法への展開を目指すものである.期間全体としての目標である「群れを知る」ための行動解析を行いながら,H29年度は「群れを作る・見る」ことに取り組んだ.それぞれの詳細は以下の通りである. (1) 鳥類や魚類,昆虫の集団に見られるようなまとまりを維持しながら移動するタスクにおいて,ロボット群のタスク達成能力を個体間の階層性の観点から検証した.各ロボットの行動規則はBoidモデルを基に実装し,ロボット間の進行方向に関する時間的な相関関係から動きの模倣,すなわちリーダ・フォロワの階層的関係を検証した.進行方向を決定する際に,目標地点へ接近する規則の重みが強い先導規則,近傍個体へ接近する規則の重みが強い追従規則を用意し,群れの先導・追従を固定した場合と動的に変更した場合のタスクの達成に与える影響を調べた.その結果,複数の規則から動的に切り替えるロボット群が高い評価値を得るとともに,その群れ行動には複数層の階層があることを確認できた. (2) スワームロボットシステムの創発的協調行動の生成のための可塑性を持つアプローチとして,人工進化を用いて制御器を設計する進化ロボティクスを採用した.タスクとして協調搬送を取り上げ,ロボットの構成が行動生成に与える影響を検証した.具体的には,ロボットの入出力,およびシナプス結合荷重値を離散値・連続値としたときの群れ行動について調べた.離散値の実験では,連続値のものと比べて早期から高い適応度を獲得している一方,実験を継続した場合は振る舞いが不安定で変動が大きいがことがわかった.連続値の場合はタスク達成する行動の獲得までに時間を要するものの,その後は安定して高い適応度を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代表者の他研究機関への転出に伴い,研究実施環境に大きな変更があったため当初の予定通りに遂行するには至らなかった.特に,申請時点には存在した計算機環境,ロボット実機および実験フィールドが利用できなくなったため,それらを新たに構築することとなった.実機ロボットについては実験環境を整えている最中であり,予定していたシミュレーション結果の実機移植時の再現性についての検証は行えていない.しかしながら,H29年度の結果から,ロボットの経験が浅い段階や進化に十分な時間を与えられないという状況においては,簡素な形式でのデータの取り扱いによって一定の性能でのタスク遂行を目指すことが有効な対応となりうるという示唆を得たこともあり,シミュレーション結果の実機ロボットへの移植におけるギャップやノイズの軽減,ならびに実機進化への展開につなげることが期待できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,実機ロボットや群れ行動のモニタリング環境の充実を図る.そして,行動獲得後に台数を増減させるなどといった環境変化を与えてロボット群が適応していく様子を分析する.すなわち,ロボット群の頑健性・柔軟性・拡張性を評価を行う.さらに,これまでに提案している動物行動学に基づく行動連鎖の解析手法について,行動の持続時間やサブグループのサイズなどを考慮した拡張を行う予定である.サブグループ間の役割分担に加えて,グループ内の個体単位での役割分担に対しても実施したい. そして,H30年度の目標として当初掲げていた「群れを遣う」ことを目指し,解析結果の利用の方策としての状況に応じた制御器の選択,および投入台数の決定に取り組む.当初は,群れ行動解析において見出した「致命的な場面を避ける」「タスク遂行の効率を重視する」などの戦略を実現する制御器を状況に応じて切り替えるレコメンデーション形式を想定していた.しかし,そのための群れ行動のデータベース構築が不十分であるため,方針の転換は避けられないと考えている.そこで,H29年度の知見を基に,進化の推移やタスク達成度を基にロボットの入出力,およびシナプス結合荷重値の分解能を調整する手法の構築と性能評価を行う予定である. これらの成果を原著論文や学会発表としてとりまとめる.また,所属機関内外でのアウトリーチ活動にも注力したい.
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Research Products
(6 results)