2017 Fiscal Year Research-status Report
Study of Dynamic Control Method for Parallel Wire Suspending Mechanism based on Slack Model of Wire
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17K14629
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
遠藤 央 日本大学, 工学部, 助教 (50547825)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 懸垂型パラレルワイヤ機構 / パラレルワイヤマニピュレータ / 動的位置決め制御 / カテナリ曲線に基づくワイヤモデル / ワイヤにおけるクロージャ / ワイヤのたるみ |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では複数本のワイヤで物体を懸垂し,ワイヤの長さを調整することで物体の位置を制御する,いわゆる懸垂型パラレルワイヤマニピュレータによる位置決めの動的制御理論の確立を最終目標としている.平成29年度においてはワイヤの動的モデルの構築を目標と計画し,下記を進めた. 1.パッシブ・フォース・クロージャの概念に基づいた複数ワイヤによる位置決めの力学的状態解析 2.カテナリ曲線(懸垂線)を用いたワイヤモデルの構築 両方共に基礎的理論モデルを構築し,それぞれ実験によりその妥当性を確認した.今後の研究において拡張および精緻化を進める必要があるが,モデル導出,実験による妥当性の確認が完了したことから,申請課題は概ね計画通りに進行しているといえる. 1.について,従来ロボットハンドなどにおいて物体とロボットとの力学的関係を評価する指標として用いられたフォースクロージャの概念をワイヤに応用することで,静的な状態における位置決めの可否判定や装置設計などに応用する技術を提案・確立した.特筆すべき事として,関連研究では能動的に駆動できるワイヤと受動的に加わる重力,外乱である外力などを別途議論しているが,本研究では重力および外力も仮想的なワイヤとしてモデルに含めることで,共通的に解析できることを提案し計算の易化だけでなく従来理論の応用も実現した。 2.について,建築分野でワイヤを用いた橋梁などの設計で用いられるカテナリ曲線をロボットへ応用した.従来もドローンによる物体の懸垂などで応用例は存在しているが,モデルによる理論曲線と実験に基づく実際の曲線の評価は十分でない.本申請課題ではこの評価に取り組み,カテナリ曲線では十分に曲線そのものをモデル化できないことを明らかにした.一方で,カテナリ曲線モデルに基づきワイヤのたるみの発生を判定することを提案し,実験により有効性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は懸垂型パラレルワイヤ機構動作時におけるワイヤ挙動の解析・モデル化を計画した.具体的にはA.柔軟に組み換え可能なパラレルワイヤ機構実験装置の構築とB.ワイヤ挙動の計測,解析およびモデル化を目標とした. A.においては,スパイラルプーリを用いた小型実験装置および市販釣行用電動リールを応用した大型実験装置を設計,製作し検討した.しかしながら,モータの特性上大容量大型のリール機構ではワイヤリールとモータ間に減速機を搭載するか,大容量のモータを採用する必要がある.減速機はそれ自体のバックドライバビリティが低く,一方でモータは最大トルクに比例して停動トルクが大きくなることから,ワイヤリールの巻き上げ時の張力とワイヤ引き出し時に必要な張力がトレードオフの関係にある.本申請課題ではこれらの知見より、ワイヤの張力を調整可能なワイヤリール機構の研究開発が必要になったと考え研究計画の見直しをした。具体的には、張力を制御した時に物体の位置極め性能について理論的に導出・検討し、張力が調整可能な新しいワイヤリール機構の設計が必要とないり、これに取り組んでいる。計画の遅れを回避するために、平成30年度に計画されていた内容を先駆けて着手した。 B.においては複数本のワイヤにより固定された物体まわりの力学的な特性とワイヤ単体の力学的かつ幾何学的な関係・特性と、巨視的・微視的な観点でモデル化、実験によりそれらを検討しできた。加えて、ワイヤ単体のモデルについては平成30年度計画の「多次元物理量解析に基づく、たるみ発生条件の調査」を先駆けて着手し、理論的なレベルで十分な検討が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では平成30年度は「a. 多次元物理量解析に基づく、たるみ発生条件の調査」をし「b. 過拘束型パラレルワイヤ機構理論の懸垂型パラレルワイヤ機構での検討」に着手することとした。 前述したように平成29年度計画での取り組みより、a. はすでに着手し理論的にモデルを明らかにしている。一方で、パラレルワイヤ機構実験装置の構築はワイヤリール機構における特性より現状で改めて設計を進めている。 平成30年度は上半期において新しいワイヤリール機構の設計および製作を進め、実験装置の構築を完了させる。下半期においてa. およびb. の実験に着手することで、当初計画通りに研究を進められると考えている。計画では実験は構築するパラレルワイヤ実験装置と力情報を計測可能なシリアルリンクマニピュレータを併用することで検討するとしている。このシリアルリンクマニピュレータは平成29年度に調達済みであり、これのセットアップおよびシステムへの組み込みも上半期に合わせて実施することで下半期に各種理論の実験的検討に着手できる。 また、平成29年度に提案・発表した各種理論の検証と精緻化を合わせて進める。パラレルワイヤ機構の理論は国内学会レベルでは数は少ないものの定期的に提案されており、新しい提案に対しての本申請課題の位置付けおよび優位性なども合わせて検討していく予定である。
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