2018 Fiscal Year Research-status Report
誘導機によるエネルギー利用の過渡状態を含む高効率化に関する研究
Project/Area Number |
17K14646
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
坂本 織江 上智大学, 理工学部, 准教授 (40443262)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 誘導発電機 / 誘導電動機 / 二重給電型誘導機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新たに開発した解析性能の高い誘導機のモデルを用いて、誘導機によるエネルギー利用の高効率化を図ることである。世界では電気エネルギーの50%以上がモーター(電動機)で消費されており、とくにその多くを占める誘導電動機について、運転・制御方法の改良により電気エネルギー利用の高効率化を図ることができれば、全体への寄与が大きい。新技術の開発に際しては、現象を実際の電気波形に即した形で解析できる「瞬時値解析」が有用な手法である。本研究では瞬時値解析のために開発した計算の安定性と精度の高い(すなわち、解析性能の高い)誘導機モデルを用い、過渡特性を含むエネルギー効率の向上への貢献を目指す。 平成30年度には、先行研究で開発したかご形誘導機モデルを基に、二重給電型の巻線形誘導機(Doubly Fed Induction Generator, 以下DFIG)モデルの開発を前年度から継続して進めた。DFIGは可変速運転による高効率化と電力変換器の小型化が可能であるという特長を有し、電力システムにおいては大容量の揚水発電所やウィンドファームなどに用いられており、誘導機によるエネルギー利用の高効率化に対して広範な導入効果が見込める機器である。平成30年度には提案手法に基づく誘導機モデルを基に、DFIGの二次励磁制御を含むモデルを作成した。発電機または誘導機として定常的に運転した場合には想定通りの特性を示したが、出力指令を過渡的に変化させた場合に想定と異なる応答を示したケースがあり原因の究明を行っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では平成30年度には二重給電型巻線形誘導機(DFIG)モデルの開発と並行して、かご形誘導機モデルについて実測対比を含む発電特性の検討も行う予定であった。提案手法に基づく誘導機モデルに関しては、かご形誘導機モデルとした場合は発電運転を含めて安定して動作しているものの、前述の通り本研究の主目的であるDFIGとしての運転については動作検証が必要な箇所が残っており、そちらに注力したために全体の進捗としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
DFIGモデルの開発に関しては、平成31年度には二次励磁制御系を含むDFIGモデルについて現在課題となっている箇所の作業を完了し、別途作成中である電力システムのための制御系と統合してシミュレーション検討を行う予定である。並行して実測対比によりかご形誘導機モデルの発電機運転時の特性について検証を行い、エネルギー効率の向上に関する研究を進める。なお実験に関しては、かご形誘導機について、一般的な吸い込み可能な電源を用いて実験できる範囲までの検証を行う。DFIGモデルの実験装置や、特殊な電源を利用する実験は非常に高価となるので、本研究の実験ではその前段階までの検証を目的とし、DFIGモデルの特性についてはシミュレーションで可能な範囲で確認する。 また、本研究ではモデルの開発に電力系統瞬時値解析プログラム(XTAP)を用いている。XTAPは電力分野の瞬時値解析ツールとして国内で広く使用されており、英語版の提供も開始された。XTAPでは開発したモデルを部品としてプログラム利用者間で簡単に共有できるので、本研究成果の活用が期待できる。一方で、本モデルに用いている提案する計算手法はXTAPに限らず適用することができると考えられるので、本研究の成果はXTAPの利用者のみに限定されるものではない。
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Causes of Carryover |
予算計画では平成30年度に二重給電型巻線形誘導機(DFIG)の開発について国際会議において発表することを想定して外国旅費を計上していたが、前述の通り部分的に動作検証が必要な課題が残っており想定していた国際会議への投稿を見送ったため、次年度使用額が生じた。モデルの検証を進め、繰り延べた分の予算については平成31年度に成果発表のための旅費として使用する予定である。
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