2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K14651
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 啓太 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70791763)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 垂直磁化膜 / スピントロ二クス / 軽元素 / 分子線エピタキシー / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は分子線エピタキシー法を用いたFe2Ni2N薄膜の作製と、第一原理計算による新奇軽元素侵入型垂直磁化強磁性材料の探索を行った。 Fe2Ni2N薄膜の作製については、当初はNiとFeNの交互堆積法による作製を予定していたが、より簡便なFeとNiとNの共蒸着法から取り組んだ。結果、Fe2Ni2N薄膜の作製には成功したものの、目的の正方晶構造は実現できなかった。しかし、成膜条件を調整することで、正方晶構造を持つFeNiN薄膜の作製に成功した。すでに、FeNiN粉末からの脱窒素法による正方晶FeNiの合成が報告されており、この手法をFeNiN薄膜にも適用することで、正方晶Fe2Ni2N薄膜や正方晶FeNi薄膜の実現が期待できる。MgO、MgAl2O4、SrTiO3(001)基板上にa軸配向したFeNiN薄膜のマルチドメインエピタキシャル成長には成功したので、今後はc軸配向した単一ドメインのFeNiN薄膜の実現を目指す。また、当初の計画に従い、交互堆積法によるFe2Ni2NおよびFeNiN薄膜の作製にも取り組む。 第一原理計算による新奇軽元素侵入型垂直磁化強磁性材料の探索については、Fe2Ni2BおよびFe2Ni2Cについて取り組んだ。結果、いずれの材料もFe2Ni2Nよりも大きな一軸磁気異方性を有することが予測され、薄膜が実現できれば垂直磁化膜になると期待できる。しかし、Fe2Ni2Nとは異なり、いずれも生成エネルギーが正となったため、実際にこれらの材料を作製するためには工夫が必要と考えられる。今後は、別の元素の組み合わせを試すことにより、より高い一軸磁気異方性持つ新しい強磁性材料の発見を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正方晶Fe2Ni2N薄膜の実現には至らなかったが、正方晶FeNiN薄膜は実現できた。Fe2Ni2BおよびFe2Ni2Cの一軸磁気異方性エネルギーの計算も行い、双方ともFe2Ni2Nよりも大きな値を示した。したがって、おおむね平成29年度の研究実施計画に記載した内容の通りに進捗したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は正方晶Fe2Ni2N薄膜の基礎物性の評価を予定している。平成29年度中にc軸配向した正方晶Fe2Ni2N薄膜の実現には至らなかったため、まずは交互堆積法による薄膜の作製に取り組み、一軸磁気異方性の発現と定量評価を目指す。続いて、X線磁気円二色性、異方性磁気抵抗効果、異常ホール効果、異常ネルンスト効果等の詳細な物性評価に取り組む。
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Causes of Carryover |
旅費が当初の想定額を下回ったため、次年度への繰越しが生じた。繰越した助成金は、旅費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)