2017 Fiscal Year Research-status Report
10~20μm厚超薄型結晶Si太陽電池における光吸収増大・高効率化に関する研究
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17K14666
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石崎 賢司 京都大学, 工学研究科, 助教 (40638524)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フォトニック結晶 / 薄型Si太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
無尽蔵のエネルギー源である太陽光を活用した太陽光発電は、今後も、その重要性がますます増加すると考えられる。現在の主流は、200μm程度の厚さの結晶シリコン(Si)太陽電池であるが、Si層を10~20μm級へと大幅に薄型化しつつも高い効率を得ることができれば、コスト低減、フレキシブル化による設置可能場所の拡大等、産業的な優位性が大幅に高まることが期待される。本研究では、光の波長オーダの周期構造を有するフォトニック結晶における大面積共振モードを活用し、薄型Si層における光吸収を増大させ、高効率動作を得ることを目指している。これまでの研究では、光吸収増大効果の最適化設計および効果の基礎実証を目指して検討を行った。まず、20μm厚の薄膜結晶Si層における光吸収について、円錐状格子点形状をもつのフォトニック結晶の効果を、厳密結合波解析(RCWA)法を用いて系統的に解析し、狙いとする厚さにおいては厚さ方向のモード数が充分得られ、多数の共振モードが形成できること、また、フォトニック結晶の格子定数を、斜め漏れ損失の抑えられるように吸収を増大したい波長よりも小さく設定することが有利となることなど、設計指針を明らかにした。これにより、20μm以下の膜厚の太陽電池の実験報告を上回る、38mA/cm2以上の電流密度が期待できることを示した。さらに、生成されたキャリアを効率よく取り出すためのデバイス構造を、有限要素法によるシミュレーションによって解析し、裏面にp/n電極を集約したバックコンタクト構造においては、薄膜Siの膜厚と同程度の間隔で電極を配置することで、初期実証として実現可能と考えられる数100cm/s程度の表面再結合速度においても、理想に近い電流密度が期待できることを見出した。また、~20μm厚の太陽電池構造の作製法を構築し、フォトニック結晶の導入による光吸収の増大効果を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では、光吸収増大のためのフォトニック結晶設計および効果の基礎実証を目指して、検討を行った。光吸収特性の解析においては、狙いとする20μm級の薄型結晶Si層における光吸収増大効果を明らかにし、物理的な解釈も含めて、フォトニック結晶導入の指針を明らかにし、従来型の、光散乱効果を用いた、20μm以下の厚さの薄型Si太陽電池を超える光吸収電流密度が実現可能であることなどを示すことに成功している。また、表裏面保護膜(SiNx)による無反射・増反射コーティングの効果を明らかにすることや、より発展的なフォトニック結晶として高さ差の小さな段差形状でも大幅な吸収増大が可能となることを見出すことにも成功している。以上を踏まえて、表面再結合等のキャリア再結合の影響を抑えて、吸収増大効果を実証可能なデバイス構造を、デバイスシミュレーションにより示すとともに、初期的なデバイス構造の作製法を構築し、吸収増大効果の実証を図った。マイクロ波光導電減衰法によるキャリア寿命測定等によって分析し、解析と対応をとることで、フォトニック結晶を導入した太陽電池における光吸収増大効果を実証することに成功している。これらの結果として、従来の20μm以下の膜厚の太陽電池を上回る短絡電流密度を示すことにも成功しており、当初の計画通り、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に得られた結果を分析し、さらなる吸収の増大の検討を行うとともに、変換効率の観点からの検討を行う。(1) 光吸収のさらなる増大の検討においては、表面に形成したフォトニック結晶の効果をさらに高め,光電流を増大する設計について検討する。非対称構造も含めた解析を行い、結合特性の向上の観点から分析するとともに、感度解析法あるいは機械学習法を活用した自動的な最適化手法の導入をも検討し、さらなる吸収増大の可能性を探索する。また、これまでの実験結果に基づき、反射鏡として作用する裏面の電極材料やその配置の改善による寄生吸収損失の抑制によるさらなる光電流の向上についても、検討を行う。これらに基づき、実験的な素子作製を通じて、吸収電流増大効果を評価する。(2) 高効率動作の検討においては、光電流のみならず、開放電圧や曲線因子を含めた電気的特性の向上を図り,総合的な変換効率の向上について検討する。開放電圧の向上のためには、表面再結合や、電極・ドープ領域での再結合等、開放時のキャリア損失パスを極めて小さく抑制することが必要となるため、表面保護膜の条件、ドープ領域の形成法と条件・コンタクト部分の電極材料の選定等を行う。曲線因子においては,素子周辺の回路の直列抵抗の低減のため電極配置等の設計や、電極コンタクトの接触抵抗等の抑制のための材料やアニーリング条件等の探索を行う。以上の検討を、逐次デバイスシミュレーションへとフィードバックさせつつ、改善点を抽出する。以上を通じて、10~20 μm級の薄膜太陽電池における高効率動作を目指す。
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Causes of Carryover |
デバイス作製法について基礎検討を推進する過程で、用いるシリコンウエハやSOIウエハ、またそれらへのドーピングの方法について、当初の予定に対してより適切な条件等が見いだされた。それらに対応するウエハ類等の準備に時間を要したため、適切な実験に効率よく助成金を活用することを意図して、次年度に一部繰り越して使用することとした。 翌年度の計画としては、上述のように、今年度の検討で得られた知見をもとに、必要なウエハ類を購入すること、およびイオン注入等のドーピング加工を実施することに、主として助成金用いる予定である。また、一部のプロセス器具や、成果発表のための旅費、大型計算機を用いた解析等にも、使用を予定している。
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Research Products
(6 results)