2017 Fiscal Year Research-status Report
新しい空地伝搬測定手法としての航空機監視情報放送の活用
Project/Area Number |
17K14688
|
Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
長縄 潤一 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 研究員 (40760400)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 電波伝搬 / 航空監視 / ADS-B |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は在空機の航空監視信号(ADS-B信号)を空地伝搬測定に活用し,覆域設計等に実用的な知見と空地伝搬メカニズムの知見を得ることを目指す研究である.平成29年度は(1)測定・評価環境の構築,(2) 既存データの有効性の評価,(3)受信電力分布のモデル化を進めた.具体的な成果は以下の通りである. (1) 測定・評価環境としてソフトウェア無線機であるUSRPによるADS-B信号受信環境を整備した.本環境は信号解読方式として標準化された手法(DOC 260B Enhanced Reception Technique)を実装している.また,航空監視実験システムが収集している大規模データと比較が可能である. (2) ソフトウェア無線機と航空監視実験システムの測定結果を比較した.この比較は,既存の大規模データの有効性を評価するとともに,解読方式や回路構成が受信電力測定に与える影響を評価するものである.具体的には,Reference Levelと呼ばれる値が伝搬測定を想定した信号強度と一致するかどうかを評価した.その結果,両者の差は一例として平均 -0.72 dBおよび標準偏差 0.76 dBとなったため,ADS-B信号を伝搬評価に用いる場合には注意を要することが確認された. (3) 数機の在空機に対して,受信電力分布のモデル化手法を適用した.見通し内では受信電力がおおむね自由空間モデルを中心に分布することを確認した.トランスポンダ電力に名目値を用いたことによるバイアスが生じたため,バイアスの分布のモデル化が必要性であることが明らかになった.また,受信電力の変動について,二波モデル,仲上ライス分布,正規分布(dB値)による当てはめを試みた.その結果,仲上ライス分布と正規分布(dB値)は良好な一致が確認されたため,今後の大規模データを用いたモデル化に道筋をつけることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ソフトウェア無線による測定・評価基盤の整備が完了した点,既存データの有効性評価を実施した点,受信電力分布モデル化について道筋をつけた点については,計画通りの順調な進展である.一方で,ADS-B信号を使うことの有効性評価(位置誤差等)については,計画よりも遅れている.以上のことから,総合的にやや遅れていると評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は,これまでに整備した測定・評価環境を活用して,(1) ADS-B信号の有効性評価,(2) 統計的モデル化,(3) 伝搬メカニズム解明を進める予定である.具体的な計画は以下の通りである. (1) ADS-B信号による受信信号強度の測定が電波伝搬の観点から有効であることを示す.これに向けては,ADS-B位置誤差・信号干渉・マルチパスの考慮が必要であり,数値シミュレーションと測定から妥当な手法を選択し,実行する. (2) これまでに検討した受信電力分布モデル化手法を航空監視実験システムで得られた大規模データに適用する.このとき,ソフトウェア無線機と航空監視実験システムについてモデルパラメータ推定結果の比較を行い,データの有効性を検証しておく. (3) 統計的モデル化の結果からマルチパスの数や発生源などに関する伝搬メカニズムの考察を行う.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,当初予定していた高額な測定機器(スペクトラムアナライザ)を安価なソフトウェア無線機に切り替えたことと,参加学会・講習会などが近場での開催であったことや予定していた学会発表のいくつかを平成30年度に持ち越したことによる旅費の使用が無かったことによる.したがって,次年度使用額については,次年度請求額と併せて,学会発表に必要な経費として重点的に使用する予定である(電子情報通信学会の大会や研究会,欧州アンテナ・電波伝搬会議EuCAP,アジア太平洋マイクロ波会議).なお,物品費として,解析用ソフトウェア(MATLAB),データ保存用ストレージ,測定環境拡充のための高周波部品および測定用コンピュータ,図書などを予定している.
|