2017 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of the communication performances in nano-scale sensor nodes exloiting stochastic resonance
Project/Area Number |
17K14690
|
Research Institution | Toyota Central R&D Lab., Inc. |
Principal Investigator |
田所 幸浩 株式会社豊田中央研究所, 戦略先端研究領域・ナノセンシングプログラム, --- (20446959)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Field emission current / 確率共鳴 / NEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
システムサイズがサブマイクロスケールであるナノスケール・センサノードが実現すると、センサ形状やサイズにとらわれることなく様々なデータの収集が期待できる。しかし、その小ささから雑音の影響を強く受け、通信感度が低下するという本質的な課題がある。そこで本研究では、生物システム等でみられる確率共鳴現象という非線形物理現象を活用してこの問題の解決に取り組んでいる。特に、研究代表者が研究開発を進めている超微細なセンサノードを例に挙げ、本現象がナノスケール・センサノードでの通信信号処理に寄与するのか、理論解析を駆使して学術的な見地から検討する。
ナノスケール・センサノードでは、量子効果により発生するトンネル電流(field emission current)により受信信号を検出する。この電流は数nA程度と非常に微弱であり、良好な通信感度を確保するためにはこの検出電流を増幅する必要がある。研究代表者は、トンネル電流の特性を生かして確率共鳴現象を発現させるとこの電流を簡易に増幅できる点を見出し、理論解析により増幅のメカニズムを解明した。
確率共鳴現象が発現するためにはシステムに非線形性が存在することが必要となる。トンネル電流が印加電圧に対して指数関数的に振る舞う,即ち非線形性が見られる点に注目し、印加電圧に雑音を加えることで現象を発現させ、増幅効果が得られることを見出した。この効果は単純な雑音印加のみでは得られず、微弱な電流に対して平均化処理を行う事で獲得できた点も興味深い.さらに理論解析によると、このような増幅効果は雑音振幅の確率密度関数の変調により得られたことがわかった.以上のような本成果は学術論文誌 IET Electronics Lettersに投稿し、採択がきまっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機械振動子を用いたナノスケール・センサノードの通信感度改善に向け、当初の研究計画として主に以下の2点を予定していた: 1.ナノスケール・センサノードにおける雑音の振る舞いを定式化し、確率共鳴現象の発現有無、および現象発現により得られるゲインを定性的・定量的に明らかにする。 2.研究代表者がこれまで検討してきた非線形最適フィルタ理論やFluctuation response theoryを発展させ、ナノスケールでの機械振動子において確率共鳴現象により得られるゲインをエンハンスする方法を理論的に明らかにする。
1.に関して、「研究実績の概要」欄で述べた通り、ナノスケール・センサノードでの現象発現有無は一部で確認できており、性能改善効果も定性的・定量的に評価済みである。さらなる基礎特性の把握のためには、詳細な雑音特性の解析などが必要となる。
2.については、2018年度での実施が主体となる。内容や進め方等の詳細は以下の「今後の研究の推進方策」欄に記す。
|
Strategy for Future Research Activity |
機械振動子を用いたナノスケール・センサノードの通信感度改善に向け、非線形振動モードに着目する。本モードでは分岐現象など特異な現象が観測されており、これらを応用した通信感度改善を図る。ただし、単にこれらの応用だけでは獲得できる改善度には限界があるため、確率共鳴現象の応用を試みる。具体的な実施内容としては、 ・非線形振動モードに着目した理論解析を行い、雑音の振る舞いを把握する。非線形確率微分方程式を解き、雑音の確率密度関数の時間発展の様子を観察することで、通信時に発生する雑音電力や振動への影響を評価する。 ・確率共鳴現象の応用を試みる。非線形特性と受信信号電力から現象効果を最大にエンハンスする雑音電力を導出し、雑音存在による感度改善量を理論解析・数値シミュレーションにより評価する。
|
Causes of Carryover |
学術論文の執筆が2018年度にずれ込んだため、その投稿前に行う英文校正費用が2017年度に使用できなかった。論文投稿を確実に2018年度に行い、助成金を使用する予定である。
|