2017 Fiscal Year Research-status Report
直交偏光子法に基づいたチップスケール原子時計の低消費電力化
Project/Area Number |
17K14697
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
矢野 雄一郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所時空標準研究室, 研究員 (80781765)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | チップスケール原子時計 / 直交偏光子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,直交偏光子法で検出される透過光のスペクトルに着目し,原子と相互作用した波長成分の光ビート信号を取得する方法を提案する.従来法では,原子との相互作用の有無に関わらず高次のサイドバンドが光検出器に入るため,所望のビート信号を取得することは困難であった.これに対して,直交偏光子法では,所望の波長成分のみの光ビート信号を取得できるため,光強度だけでなく位相情報が得られることが期待される.その結果,あたかも量子部をGHz 帯域の超狭帯域バンドパスフィルタのように扱うことができ,簡易なアナログ回路で原子時計を構築することができるようになると考えられる. 初年度は直交偏光子法による光ビート信号のスペクトル特性を調べるため,透過光の光ビート信号を検出するための光学装置および量子部の通過特性を評価するための測定環境を構築した.まず,直交偏光となるための2つの直線偏光子を導入した.その後,量子部の通過特性を評価するために,ルビジウム原子の遷移周波数6.8GHzに対応する高速フォトディテクタとネットワークアナライザを導入した.これらを用いて,装置単独での通過特性を測定したところ,半導体レーザの変調帯域が小さいことが原因で,当初想定よりも遷移周波数での挿入損失が大きいことが判明した.この挿入損失を抑えるために,周波数を半分にするプリスケーラを導入し,2次高調波のビート信号の位相を測定できるように測定装置を改良した.その結果,ルビジウム原子の遷移周波数で位相変化を測定できる環境が整った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験に不可欠な測定装置(ネットワークアナライザ)の導入に時間を要したこと,半導体レーザの変調周波数帯域が想定より小さかったため,バンドパスフィルタやプリスケーラを導入するなどの改善に時間がかかったことが理由である.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度で,光ビート信号を取得する実験装置が整った.今後は,原子と相互作用した光ビート信号の位相変化の測定に着手する.スペクトル特性を評価したのち,周波数安定度を測定する方策をとる.まず,直交する2つの偏光子の角度を変化させながら,原子共鳴下における,高次高調波を含む通過特性をスペクトルアナライザで測定し,本手法で得られる信号強度の知見を得る.次に,ネットワークアナライザを用いて,原子共鳴による位相変化を検出する.そして,位相変化特性から,信号強度が最大になるように,光路長変化によって位相をシフトさせ,共鳴中心で周波数を安定化できるように,実験装置を構成する.最後に,構成された実験装置で,周波数安定度を測定し,本手法の有効性を確認する.
|
Causes of Carryover |
次年度に使用額が生じたり理由は,実験装置の購入費が想定よりも安かったためである.次年度の使用額は,主に高周波部品(ローノイズアンプ,狭帯域フィルタ)の購入に使用する.本実験において,2つの偏光板の角度を直交近傍に設定する条件で,最適なS/N比が得られることが知られているが,信号強度が小さくなる可能性がある.このような小さい信号を適切に取得し,処理するために,ローノイズアンプと狭帯域のフィルタが可能性がある.
|
Research Products
(1 results)