2018 Fiscal Year Research-status Report
複数ロボットとオペレータとの協調による超スマート社会のための高信頼な自律分散制御
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17K14701
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 直樹 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80637752)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 協調制御 / 分散最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マルチエージェントシステムの協調制御や分散最適化に関する基礎理論を構築することである。平成30年度は、複数のエージェントが協調することで、個々のエージェントのローカルな目的関数の和で表されるシステム全体としての大域的な目的関数を最小化する分散凸最適化問題について考察した。まず、エージェント間の通信回数を低減する事象駆動型の分散劣勾配リズムを提案した。各エージェントは自身のローカルな目的関数に関する情報しか持っていないため、システム全体のグローバルな目的関数を最小化するには、他のエージェントと情報交換を行うことで最適解を推定する必要がある。しかし、一般にネットワーク帯域やバッテリ容量といったエージェントが使用できるリソースは限られており、アルゴリズムの反復の各ステップで他のエージェントと通信を行うことは望ましくない。提案手法では、各エージェントが自身の現在の推定値と最後に通信を行ったときの推定値との差があるしきい値を超えたときのみ通信を行う事象駆動型通信の考え方を取り入れ、不必要なネットワークリソースや電力の消費を抑える手法を提案した。また、最適解をオンラインで予測する分散オンライン最適化へ事象駆動型分散最適化アルゴリズムを応用した。さらに、モーメント法や近接最小化法の考え方を取り入れた手法についても検討し、分散最適化アルゴリズムの収束速度を改善できることを示した。本研究では以上のほかにも、合意制御を応用したカメラセンサネットワークによる協調監視について検討し、カメラを搭載したドローンが近傍のドローンとネットワークを介した協調を行うことで、適切にターゲットを追跡できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度はおおむね順調に研究を進めることができた。平成29年度に引き続き、エージェント間の通信制約を考慮した事象駆動型の分散最適化アルゴリズムや収束速度の向上を目的とした分散最適化アルゴリズムを導出し、それらの収束性に関する理論的考察を行った。また、事象駆動型最適化アルゴリズムの分散オンライン最適化への応用を行った。オンライン最適化においては、エージェントが選択した戦略と最適な固定戦略との差がリグレットと呼ばれる指標を用いて評価される。提案手法では、エージェント間のネットワーク構造がリグレットに与える影響がグラフに対応するペロン行列の固有値によって定量的に評価できることを示した。平成30年度はこれらの成果をもとにした学術論文3本が採録され、国際学会6件、国内会議5件の発表を行うことができた。以上より、平成30年度はほぼ予定通り遂行されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、平成30年度までで得られた成果をさらに進展させたマルチエージェントシステムによる分散最適化や分散機械学習に関する研究を行う予定である。平成30年度までの研究では、エージェントは実数値の情報を他のエージェントへ伝達できると仮定してきた。しかし、実際にはネットワーク帯域は有限であるため、ある量子化された値しか伝達することができない。このような量子化通信を考慮した分散最適化法についてはこれまでにも研究はなされているが、その多くは劣勾配法を基にしたアルゴリズムである。劣勾配法に基づく手法は、他の最適化手法に比べて一般に収束速度が遅い傾向がある。そこで、今後の研究ではエージェントのローカルな目的関数が微分可能な場合について、分散量子化通信アルゴリズムの高速化を検討する。また、分散最適化や分散オンライン予測アルゴリズムの応用として、カメラセンサネットワークにおけるターゲット位置推定問題や拡散現象における初期濃度分布推定問題について検討する。
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Causes of Carryover |
2018年度に参加予定であった国内会議について、2019年度開催の別の国内会議に変更したため。なお、研究計画自体に変更は生じていない。2019年度に参加予定の学会参加費等に使用予定。
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Research Products
(14 results)