2017 Fiscal Year Research-status Report
沖縄県の環境作用を考慮した水和物によるコンクリートの物質移動性状の評価
Project/Area Number |
17K14709
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
須田 裕哉 琉球大学, 工学部, 助教 (10636195)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乾燥 / 塩化物イオン / 拡散係数 / 水和物 / C-S-H / 凝集構造 / ひずみ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,沖縄県の高温多湿かつ夏季の乾燥という環境作用に着目し,これらの要因がコンクリート内部へのイオンと気体の物質移動に及ぼす影響の把握とそのメカニズムを解明し,これらメカニズムを解明するアプローチとして,沖縄県の環境条件がセメント硬化体内部で生成される水和物特性(組成,構造,性質)と空隙構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている. 本年度の研究では,湿度の変化による乾燥を受けたセメントペーストの塩化物イオンの拡散性状を調査した.また,養生温度の違いやフライアッシュの有無についても検討した.さらに,乾燥後に飽水とした硬化体のひずみと窒素吸着による窒素吸着等温線も取得し,乾燥による固体(水和物)と空隙の構造変化に着目した上で塩化物イオンの移動性状に及ぼす乾燥作用の影響について評価を行った. その結果,乾燥を受けたセメントペーストの塩化物イオンの拡散係数は,使用する材料や配合に関係なく,乾燥時の湿度の違いによって変化し,乾燥時の湿度が低下すると拡散係数は大きくなり,中湿度程度を境に拡散係数は最大値を示した.この乾燥時の湿度による拡散係数の変化について検討するため,固体と空隙の変化に着目し,乾燥後の飽水としたひずみと乾燥による空隙構造の変化を評価した.固体の変化として,セメントペーストの非回復性のひずみは乾燥時の湿度が低いと大きくなり,また材料としてフライアッシュを使用し,その反応が進むほどひずみは大きい値を示した.さらに,窒素吸着等温線に基づく空隙構造の評価から,乾燥によってセメント水和物(C-S-H)の凝集構造の発展とそれに伴う空隙構造の複雑性の低下が示唆される結果を得た.以上の検討より,この固体の構造変化に起因した空隙構造の変化が塩化物イオンの拡散性状に影響することが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では,乾燥によるセメントペーストの拡散性状の変化について検討を行う予定であり,空隙構造の評価は次年度の予定であったが,研究の進捗から次年度実施すべき事項の空隙構造の評価も本年度に実施することができた.さらに,次年度に検討すべき内容(乾燥時の水和物の物性や吸水時の挙動)についても明確となった.以上の理由により,計画全体から本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により,実験室レベルで乾燥によって塩化物イオンの拡散係数が変化することが示された.今後はこれら要因を明らかにするため,セメント硬化体を構成する水和物の観点から物性等の詳細な検討を行い,乾燥による塩化物イオンの拡散係数の変化が空隙構造の変化か,または水和物への吸着性状の影響かについて精査する.さらに,応用的な検討として日本各地で暴露試験を行い,地域間の環境作用の定量的な評価を試みる.
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