2017 Fiscal Year Research-status Report
有効飽和度で記述する三相連成有限変形解析手法の開発と不飽和三軸試験によるその検証
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17K14720
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 高広 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助教 (20771075)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不飽和土 / 有限変形解析 / 封入空気 / 有効飽和度 / 水分特性曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
不飽和土の保水性を表す水分特性式は、最大の水分量と最小の水分量の間で定義される有効飽和度とサクションの関係を記述する。水分量として飽和度を用いる場合を考えると、低サクションにおいては間隙水に封入された空気が存在するため、最大の飽和度は100%より低く、高サクションにおいては土粒子表面に吸着水が残留するため、最小の飽和度は0%より高い。本研究では、間隙空気を「封入空気」と連続した相として存在する空気(以後「連続空気」)に、間隙水を「吸着水」と「自由水」に明確に分けて扱い、新たに有効飽和度を定義し直す。その有効飽和度に基づいた不飽和土の有限変形解析手法を開発することを目的とする。また、不飽和三軸試験結果との比較を通じて、本解析手法の妥当性を検証する。 本年度の研究計画は、(1)有効飽和度に基づく支配方程式の再定式化とその解析コードの開発と(2)不飽和三軸試験による間隙空気が気泡として水中に取り込まれる挙動の把握であった。(1)に対しては、新たな有効飽和度に基づく土骨格~自由水~封入空気~連続空気連成有限変形解析コードの開発に成功し、既往の実験結果との比較を通じて、特に封入空気を考慮可能であることの有効性(連続空気が封入空気へ遷移できる点と封入空気の圧縮性を表現できる点)を示した。(2)に対しては、間隙空気を水に溶けやすい二酸化炭素に置き換えた実験を新たに実施して、封入空気と連続空気の存在量の把握を試みた。 封入空気は土粒子間の拘束を強める表面張力(サクション)としては働かないため、間隙空気を封入空気と連続空気に分けて扱うことは、より精緻な構成モデルを構築する上でも重要である。また、近年、不飽和化による地盤改良がもたらす耐震効果に注目が集まっているが、封入空気の圧縮性を表現可能であり、動的にも対応した本解析コードを用いれば、詳細な耐震性評価も可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述(1)について、解析コードの開発を終え、妥当性確認も行ったため、当初の計画通りに進んでいる。(2)については、当初計画とは異なり、間隙空気を水に溶けやすい二酸化炭素に置き換える手法を新たに考案・実施した。その結果、空気を用いる場合にはサクションがゼロであっても残留する封入空気が、二酸化炭素を用いる場合には間隙水に溶解するために減少し、飽和度が高くなることを確認し、封入空気と連続空気の存在量を把握する上で一定の成果があった。しかし、実験操作が複雑で、長時間を要するため、多くの結果を得られないという課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
前述(2)に関連して、間隙空気を二酸化炭素に置き換える実験は、結果を得るために長時間を要するため、今後は土試料を非塑性シルトに限定して実験を進める。封入空気と連続空気の存在量がサクション毎に明らかになれば、より精緻なモデルを構築可能となる。その後、各種排気排水せん断試験を実施し、その数値シミュレーションを行うことで、引き続き本解析コードの妥当性確認と更なる高度化を進めていく。
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