2017 Fiscal Year Research-status Report
深海底地盤に隔離されたCO2ハイドレートの相転移を考慮したトラップメカニズム
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17K14721
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩井 裕正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80756908)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 弾塑性構成式 / ガスハイドレート含有地盤 / 二酸化炭素ハイドレート / 海底地すべり |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は主にCDHがトラップされた海底地盤の構成式の開発および,CDH分解を模擬した海底地盤の不安定化現象に関する模型実験を実施した. まず,ガスハイドレートのモホロジーの違いに着目し,その初期割合を考慮した弾塑性構成式を新たに提案し,これがメタンハイドレート(以下MHと記す)および二酸化炭素ハイドレート(以下CDHと記す)といった種々のハイドレート含有地盤の三軸圧縮試験結果を統一的かつ精度よく再現可能であることを示した.さらに,CDH含有地盤のせん断に伴うモホロジー変化に着目し,ハイドレートの地盤間隙内における形態変化も考慮した構成式を開発した.また,あるハイドレート飽和率に対してCDHがトラップされる存在形態が変化することで,トラップされた地盤の強度やダイレイタンシーがどのように変化するのかを前述の提案した構成式を用いることによって感度分析的に検討した. 次に,CDH分解を模擬した発生流体挙動の観察と地盤変動計測も実施した.海底地盤におけるCDH分解に伴う間隙水圧・間隙ガス圧の上昇における海底地盤の地すべりに注目し,模型実験を行った.海底地盤を模擬した模型内に10度および1度の斜面を形成し,斜面下から水圧をあたえた時の地すべり挙動を水中カメラの映像とPIV解析によって調査した.平成29年度は,ガス圧のコントロールは未だ難しいため,まずは水圧からの調査としている.実験の条件としては,水圧を与える位置を変化させることで過剰間隙水圧を与える位置を調節し,さらに地盤内への不透水層挿入の有無を変化させた.その結果,不透水層が無い地盤の場合は斜面法尻付近にボイリングが発生し,不透水層を有する場合は,間隙水圧を与える位置が局所的であっても不透水層に沿って地盤にすべりが確認された.また水圧を与える範囲が広いほど小さな水圧を与える段階ですべりが発生し,またすべりの規模が拡大した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたCDH分解の要素試験は試験装置の整備等が必要であり、平成29年度に実施することはできなかった。平成30年度に実施できるように試験装置整備および実施日程の再調整が必要である。その代わり、CDH分解時の二酸化炭素ガスの発生に伴う海底地盤変形に関する模型実験を予定を早めて実施した。これに関しては、ガスを取り扱う現象はガス圧計測や発生する気泡の大きさのコントロールなど煩雑さを伴うため、平成29年度は基本ケースとして間隙水圧を与える模型実験を実施した。その結果、傾斜がおよそ10度の斜面において、斜面内に水や空気を通さない不透水層が存在する場合は、過剰間隙水圧が発生する場所が局所的であっても不透水層に沿って地すべりが発生することを明らかにした。 また、解析コードの開発においてはガスハイドレート含有地盤の強度変形特性を統一的に表現可能な弾塑性構成式の開発を行なった.要素試験レベルでのCDH含有地盤の強度変形特性を精度よく再現することに成功した.今後二酸化炭素の相変化を考慮した支配方程式を定式化していく予定である. 以上の理由により、当初の研究計画と比較して平成29年度に実施する内容から変更はあるものの、研究計画を前倒しすることで全体としては概ね順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は我々が提案してきた弾塑性構成式を三軸試験のような要素試験結果のみだけでなく,実地盤の,境界地問題にも適用できるように改良していく.CDHがトラップされた海底地盤の変形を解くための手法としては,有限要素解析法を用いる.これまで,土骨格の変形-間隙水および間隙ガス圧を連成した解析コードの開発を行ってきたが,CDH隔離後のトラップメカニズムをより精緻に解くためにはさらに二酸化炭素の科学的特性も考慮する必要がある.二酸化炭素の場合は水への溶解度が大きいことや,二酸化炭素ガスが液化する圧力条件も相対的に低い.そこで本研究ではCO2(気体)からCO2(液体)への相転移を考慮し,相転移の流体密度変化に伴う圧力変化および温度変化を数学的にモデル化する. さらに,昨年度同様に海底地すべりに関する模型実験を継続して実施していく.過去海底地すべりは1度に満たない低角度でもすべりが発生していることを踏まえ,今年度はさらに低角度の1°の斜面を形成し,10°の実験時と同じく過剰間隙水圧を与える位置と不透水層の有無を変化させた時にどのような反応を地盤が起こすのかを調査する.また1°の斜面形成をした実験より水圧計を地盤内に設置し,不透水層下への水の広がり,またどのような強さの過剰間隙水圧が地盤に与えられたときにボイリングや地すべりといった地盤挙動が発生するのかに特に注目して実験を行う.またその後は従来の目的通り海底地盤内でのガスハイドレートの分解を模擬し,水圧を与える代わりに空気圧をその圧力と与える範囲を調節し模型内地盤に与える実験を行う.現在はガス圧を調整する方法を模索している段階であり,調節をしたガス圧をさらに均等に地盤に広げる方法も検討する必要性がある.
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