2017 Fiscal Year Research-status Report
粒子法を用いた土砂災害の発生とその挙動予測および砂防施設の新しい構造形式の提案
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17K14722
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
竹山 智英 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (00452011)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土砂災害 / 粒子法 / 不飽和地盤 / 境界条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,斜面崩壊のような非常に大きな変形を伴う現象の解析に適する粒子法のひとつであるSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法をベースとして土砂災害に対する予測に必要な数値解析手法を構築し,降雨の特徴と災害発生の関係や効率的な砂防施設の構造形式を検討することを目的としている.本研究をさらに進めることにより、ハザードマップの作成や災害・被害のリアリティのある可視化によって防災に対する意識向上にも役立てることができると考えている.不飽和地盤を対象として、降雨による過剰間隙水圧の上昇やそれに伴う有効応力の減少、サクションの低下を計算することができるSPH手法は提案されていない.しかし、豪雨による斜面崩壊のシミュレーションをするためには、不飽和地盤を考慮した解析が必要である.平成29年度は,飽和地盤を対象とした土/水連成SPH手法をもとに不飽和地盤を表現できるモデルを組み込み,流量境界条件をラグランジュの未定乗数法を用いて設定する方法を適用した.仮想的な斜面を対象として,斜面内の地下水位面が一定速度で上昇した場合,斜面表面に降雨があった場合の解析を行い,飽和度の上昇と強度低下による変形量の増大を確認することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画についてはほぼ達成している.サクションにより硬化する構成モデルがプログラムに組み込まれていないが,平成30年度に実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度構築したSPH法の解析手法を用いて降雨の特徴と土砂災害発生の関係、効率的な砂防施設の構造形式の検討を行う。降雨の強さや継続時間は土砂災害の発生を予測する際に重要となる指標である。短時間でも降雨強度が強い場合や降雨強度が比較的弱くても長時間降雨が継続することによって、災害が発生することが考えられる。したがって、数種類の降雨強度、継続時間の組み合わせを流量境界条件として与えた場合の計算を実施し、土砂災害発生との関係についてまとめる。既存の土砂災害発生の危険度予測との比較を行うことにより、得られた結果の妥当性を確認するとともに、既存の方法における注意すべき点、改善点を整理する。また、比較的短い期間に豪雨が連続して発生する場合には、先行降雨の影響を考慮することも必要となると考えられるため、先行降雨の有無が土砂災害の発生に与える影響を次の降雨までの期間,先行降雨の強さや継続時間をパラメータとして数値計算を行い整理する。砂防ダムに鋼管杭を打設し,変形によってピークの外力を低減させるような構造形式を考える。これにより、土砂災害の衝撃力を受け止めるダム自体の設計強度を従来のものよりも小さくすることができる可能性があり、また変形に対してより粘り強い構造形式とすることができる。構築する数値計算手法により、土砂災害発生時の構造物への衝撃力や作用する土圧が変形量に応じて、どの程度の低減効果があるかを評価することが可能であり、杭の根入れ長やダムの強度を変化させた数値計算を行うことにより、どのような砂防施設の構造形式がより効率的であるかをそのメカニズムとともに整理する。
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Causes of Carryover |
平成29年度には,論文投稿を行わなかったため,予定していた成果物の論文発表のための論文校正費用,論文投稿費用が不要となった.平成30年度では,平成29年度の研究成果を公表するためにこれらの費用を使用する計画である.
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