2017 Fiscal Year Research-status Report
干潟域のヘドロ化問題に挑む静電気力を考慮した有機泥の凝集・分散機構の解明
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17K14731
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中下 慎也 広島大学, 工学研究科, 助教 (90613034)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 陽イオン交換 / 表面電位 / 有機物量 / イオン強度 / ヘドロ / 巻き上がり / 沈降速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市河川では有機泥が過剰に堆積し,底質が還元化することによってヘドロ化が進行し問題となっている.有機泥の循環(凝集・沈降・堆積・巻き上がり)機構の解明なくしてはヘドロ化した干潟の改善やヘドロ化への対策を成功に導くことは難しい.感潮域では淡水と海水が混合するため,イオン濃度(=イオン強度)が大きく変動する.そのため,有機泥の循環機構の解明には電気化学的な要因を無視することはできない.本研究では,河口域でのヘドロ化した干潟の回復を目的として,有機泥の静電気力(表面電位や間隙水のイオン濃度)を考慮した凝集・分散機構の解明を目指している. 1年目は強制的に吸着するイオンと間隙水のイオン強度を変化させた有機泥を作成し,泥粒子や界面の沈降速度,表面電位の測定を実施した.測定結果より,泥粒子はイオン強度が高くなるほど凝集しやすくなり,有機泥の表面に吸着する陽イオンの価数が大きくなると表面電位が高くなるため凝集しやすくなることを明らかにし,その関係は電気化学的な微細粒子の凝集・分散を表現するDLVO理論を用いて説明可能であった.また,界面の沈降速度は有機泥の表面に吸着する陽イオンに依存して変化し,吸着陽イオンの価数が大きいほど界面の沈降速度が遅くなることを明らかにした. これらの結果はこれまで物理的な要因のみが考えられていた泥の巻き上がりや凝集・堆積が電気化学的な要因によっても変化することを示す重要な結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目で予定していた項目は,実験に使用する有機泥の採取と有機泥の性状と表面電位の測定の2つであった.有機泥の採取,有機泥の性状や表面電位の測定は完了しており,採取した試料を用いた沈降実験も先行して既に実施しており,結果を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に実施予定の項目は,間隙水のイオン濃度を変化させた有機泥の作製と沈降速度の測定と有機泥に吸着する陽イオンや有機物量を変化させた有機泥の作製と表面電位,沈降速度の測定の2つである.間隙水のイオン濃度や有機泥に吸着する陽イオンを変化させた沈降実験については一部終了しており,今後は間隙水のイオン濃度や有機泥に吸着する陽イオンを変化させた残りの実験を行うとともに,有機物量を変化させた沈降実験等を行う予定である.
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Causes of Carryover |
次年度に実施する予定の実験で必要な器具や消耗品を購入するため次年度使用額が発生した.
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