2017 Fiscal Year Research-status Report
遡上津波による沿岸石油コンビナートタンク群への作用波圧特性に関する基礎的研究
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17K14733
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長山 昭夫 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (40621438)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 津波波圧 / 遡上津波 / 津波防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、沿岸構造物を群体とみなし遡上津波先端部の3次元的流動を解明し、これをもとに遡上津波の沿岸構造物群への作用波圧低減手法を示すことである。この目的を達成するため本年度は大型平面水槽を利用した模型実験と数値流体ソルバ改良により構造物周辺の津波流動の再現と群体効果の評価を行った。並列計算環境構築、非構造格子メッシャーのパラメーターの検討、数値ソルバの改良を行った後、沿岸域の大型構造物を想定しドライベット上に円柱群を格子状に配置し、津波を入射させ遡上津波先端部の流動と円柱に作用する波圧特性について検討を行った。 その結果、格子状配置の円柱群への波圧変動は格子間隔に強く影響を受けることがわかった。例えば、前列円柱における前方側面では単体円柱を設置した場合と同様の衝撃的な波圧上昇とその後,準定常的な波圧が作用し、後方側面においては緩やかな圧力上昇が確認できた。また後列円柱における前方側面では円柱設置間隔が円柱直径よりも狭い場合,前列円柱による波の遮蔽効果により急激的な波圧上昇はほぼみられず,貯留水位に準じた波圧が作用していた。また間隔が円柱直径と等しい場合は津波先端部が前方側面の広い範囲に同時に衝突するため各点で同時に波圧が上昇する特徴があった。さらに間隔が円柱直径よりも広い場合、急激な圧力上昇は一時的であることが明らかになった。 後列円柱側面に的を絞り、無次元最大波圧について検討した結果、前方側面において間隔が円柱直径と等しい場合において無次元最大波圧が最も大きくなった。これはこの間隔において前方側面全体において滞留する水量が他のケースよりも多くなるためである。さらに貯留水機能が働くため比エネルギーについてはその大部分が圧力水頭になる点も特徴的である。一方、後方側面では設置間隔が円柱直径よりも狭い場合、無次元波圧が大きくなる傾向になることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定通り、構造物周辺の津波流動における群体効果の評価と遡上津波のタンク群に対する波圧特性の評価を実施し、おおむね順調に進展している。 並列計算環境構築においては、事前に環境構築を検討し研究開始とともに環境構築を実行した。プレ処理、ソルバ実行、ポスト処理と一連の処理について随時実行可能な状況にある。また数値ソルバの改良はソースコードの判読から開始したため当初予定よりも時間を費やしたがベンチマークモデルを使用しダムブレイクによる圧力の検証により、十分な精度を有していることを確認した。円柱側面への作用波圧のための数値計算においては、円柱周辺での水位、流速、圧力を推算することと、円柱側面への作用波圧を検討した。計算ケースの計算時間が8コアの並列計算で1-2週間かかるため計算が発散しないよう、プレ処理の計算メッシュ作成時にゆがみ度や非直交性についてモニタリングを実施した。また計算ソルバの離散化スキーム、緩和係数と乱流モデルについて比較検討を行い一定の知見を蓄積した。模型実験では、数値モデルの妥当性の検討のため、計算メッシュと同様な条件を採用した。当初は3DプリンターによるABSとPLAを材料とした円柱モデルを使用し、作用波圧を測定したが、測定波圧が異常値を出す事態が頻発したため、材料の違いによる作用波圧の検討を行った。その結果、材料自体の外力に対する歪みの大きな違いがあることがわかり本研究ではモルタルを使用することとした。また、今回自作の分力計の開発を行った。事前調査で選定したデジタルアンプと測定機器を組み上げ、既製品の小型3分力計との測定値について比較検討を行うことで、その精度について検証した。その結果、入射波条件に制限は受けるものの自作した分力計は既製品と同程度の精度を有していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、構造物周辺の津波流動における群体効果の評価と防波堤・防油堤による遡上津波抑制効果の評価について実行し、模型実験と数値ソルバの改良を行う。数値ソルバの改良については、オーバーメッシュを利用し、造波波源から波の遡上域までの全域を再現できるモデルの開発と検討を行う予定である。またより高精度な作用波圧推算のためにAMDというメッシュ細分化機能の実装を予定している。模型実験については、簡易PIV測定を行い、遡上津波先端部流速について検討を行う予定である。また、沿岸域の大型施設に常設されている防波堤と防油提の津波抑制効果について評価し、指標化を目指す。 また当初予定していた研究組織内の大学院生1人が就職のため退学し、研究組織の人数自体は変更があるが、連携研究者と技術職員と連携を深め、研究計画を遂行したい。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた主な理由は、模型実験における自作分力計の製作費用である。分力計を自作するために計測用アレイの作成、アンプの選定等の工程で想定を超えた費用が発生した。また、造波プランジャーの油圧システム点検や模型実験における環境整備等の費用が発生したことも影響した。 しかしながら自作の分力計の作成についてはほぼ完成しているため、翌年度以降は材料やアンプの選定作業は実施しないため追加で必要になる費用は発生しない。さらに大型機器の日常メンテナンスを頻繁に行い常に機器の状態をチェックする体制とするため当初の計画を遂行可能である。
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