2017 Fiscal Year Research-status Report
土砂トレーサーを利用した土砂動態-地形変動過程の理解と予測
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17K14734
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
岩崎 理樹 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 研究員 (70727619)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 土砂トレーサー / 河床変動モデル / 数値計算 / 移流分散 / ランダム性 |
Outline of Annual Research Achievements |
トレーサーの移流分散過程を再現するモデルについて明らかにするために,交換層の概念を導入した上で,掃流砂モデルとしてよく用いられるフラックス形式と連行形式の土砂保存則をベースとした土砂トレーサー輸送モデルの性能について検討した.両者を河床変動のない動的平衡状態を仮定した一次元場に適用することで,フラックスモデルではトレーサー粒子の流下方向分散を一切再現出来ないこと,連行形式モデルでは,土砂の堆積分布を表現するステップレングスの確率密度関数を通じて流下方向のトレーサーの分散を適切に表現出来ることを明らかにした.一方で,両モデルを顕著な動的河床形態である自由砂州が存在する場に適用したところ,巨視的にはどちらも同程度の流下方向分散を示すことが明らかとなった.これは形状や移動速度にある程度のランダム性を持つ自由砂州が,土砂トレーサーを分散させる作用を持っており,かつこの河床形態による分散作用が粒子運動固有のランダム性であるステップレングスのばらつきに起因する分散作用よりもかなり大きいためである.この検討より,顕著な河床変動がある場合にはどちらのモデルを用いてもトレーサーの移流分散を表現出来ることが明らかとなった.
上記で構築したフラックス形式のトレーサーモデルと,河岸侵食を伴う流路変動に適用した.実験では,河岸から供給される土砂を着色しており,トレーサーの移動・分散作用を可視化している.計算結果は,河床変動,河岸侵食,流路変動の相互作用をよく再現出来るだけでなく,それに伴う土砂トレーサーの分布まで定性的に再現出来ることが明らかとなった.特に,固定砂州のような静的な河床形態が存在する場合,トレーサーは砂州に取り込まれることで長時間河床に停止し,流路変動等の大規模な地形変動に伴いゆっくりと下流に移動分散することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度で当初計画していた,土砂トレーサーの移流分散モデルの構築とその基本的特性を明らかにすることができた.また,構築したモデルを室内実験に適用することで,その予測可能性を示すことができた.さらに,同時並行して河川における河床変動をより合理的に表現可能な数値モデルの構築も実施しており,次年度以降,このモデルをトレーサーモデルと結合し,大規模河床変動現象に適用する準備を整えることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に構築した河床変動モデル,並びに土砂トレーサーモデルをより複雑な場に適用することで,実河川におけるトレーサーの移動・分散に関する予測可能性をより明らかにする.また,モデルの検証をより厳密に行うための室内実験,理論的検討を行うことで,最終的に構築するモデルを多角的な視点で検証する.また,最終的に現地に適用することを念頭に,モデル河川における調査や基礎的検討を実施していく.
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Causes of Carryover |
初年度実施予定であった室内実験が,実験施設の稼働状況により実施が困難であった.数値計算モデルの検証という意味での実験については,既往の室内実験等で代替できたため,事業の進捗には支障はないが,この分を次年度に繰り越し,実施予定であった室内実験を進めていく.また,初年度に予定していた国際会議への参加については,初年度に得られた成果をまとめて次年度の複数の国際会議において発表予定であり,その旅費に使用する.
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