2017 Fiscal Year Research-status Report
確率安定性アプローチによる空間経済モデルの新たな統一的解析手法
Project/Area Number |
17K14735
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大澤 実 東北大学, 工学研究科, 助教 (50793709)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 確率安定性 / 進化ゲーム / ポテンシャルゲーム / 経済地理学 / 集積の経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本応募課題の目的は,進化ゲーム理論分野の確率的進化ダイナミクスの理論にもとづき,空間経済モデルの構造および特性を統一的に理解しうる新しい汎用的分析フレームワークを構築し,モデル群を体系化することである.この目的を達成するため,2017年度は Phase 1 として単一空間スケール・単一立地主体モデルの分析(方法論の構築)を実行した. Step 1 として,まず,確率安定性解析手法の整理と具体的モデルへの適用として,Social Interaction (SI) 型の都市経済モデル (e.g., Beckmann, 1976; Mossay and Picard, 2011) を一般化することにより定式化した.この際,応募者による先行研究で明らかとなった2つの典型的モデル・クラスを代表可能なよう,それぞれに対応する2種類のモデル(ポテンシャル・ゲーム)を定式化した.応募者による先行研究成果との比較可能性のため,1次元離散円周空間における理論解析を通じて,確率安定均衡状態の特性を調べた.特に,交通費用の変化が集積パターンに与える基本的影響を解析的・数値的に明らかにした. Step 2 として,分岐理論(局所安定性解析手法)による結果との比較を実行した.具体的には,均衡状態における利得関数の Jacobi 行列の固有値に基づく標準的な局所安定性解析手法に基づき,ベンチマーク・モデルの特性を解析的・数値的に分析した.そして,上述で明らかにした確率安定均衡解の性質と,局所安定解の性質とを比較することによって,その整合性を確認し,確率安定性解析の妥当性を示した. 以上の結果の一部は,複数の国際学会で発表済みである.また,国内・国際学術誌に投稿中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記【研究実績の概要】に述べたように,基本的に計画通りに進行しているため.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,Phase 1 の成果について,学術誌へ確実に発表していく. また,当初計画の Phase 2 を遂行する.具体的には,Phase 2 では複数空間スケール・複数立地主体モデルの分析によって,構築した方法論の有効性を確認していく. Step 1 として,複数立地主体モデルを分析する.Fujita and Ogawa (1982) 型の,複数立地主体(企業,家計)モデルをポテンシャル・ゲームとして定式化する.このステップの実行可能性は,同モデルの空間的相互作用項が対称なSI 型であることで担保される.各立地主体に対する交通費用パラメタの変化が確率安定均衡解に与える特徴を整理する.特に,従来研究では未知のままの,交通費用パラメタ空間における安定集積パターン分類を解明する. Step 2 として,複数空間スケールモデルを分析する.Tabuchi (1998) を拡張した,複数空間スケール間の相互作用を表現しうるモデルを構築する.都市内・都市間の階層的空間構造を持つモデルを構築する.空間を外生的に入れ子状に設定することで実現し,空間自体が地域内・地域間の2種類の交通費用パラメタを持つ状況を考える.そして,交通費用パラメタ空間上における安定集積パターン分類を解析的・数値的に解明する. なお,Phase 3(複数空間スケール・複数立地主体モデルの解析)については,当初予定していた 通り上記 Phase 2 の進捗状況に応じて実施を判断するものとし,Phase 2 までの確実な達成を期す.
|