2018 Fiscal Year Research-status Report
ビックデータの時間情報が拓く,新たな都市間旅行需要予測手法の開発
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17K14736
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山口 裕通 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (10786031)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 長距離旅行行動 / 連休効果モデル / 新幹線整備の直接効果と間接効果 / 携帯電話位置情報データ / 非負値行列因子分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,携帯電話位置情報データを活用し,そのデータから得られる都市間旅行需要の性質を明らかにしたうえで,時間情報を最大限に活用した新たな需要予測モデルの提案を目指すものである.2018年度の研究の成果として,大きく分けて2つの研究実績があった. (1) 都市間旅行の季節変動モデルの開発 季節変動の分解を通じて,大まかな特徴を整理・モデルを提案した.そのうえで,とくに重要であることが明らかになった「連休効果」に着目してそれを分析できるモデルを提案した.このモデルによって,総旅行数の観点では,長い一つの連休をつくるよりも,3連休・4連休を複数設置したほうが,旅行数が大きい傾向にあることを明らかにした.これらの成果は,交通計画的な需要予測に適用できるだけでなく,観光に関連する政策分析等に貢献することも期待できる. (2) 非負値テンソル分解を用いた需要予測モデルの開発 膨大な時点のデータを活用する新しいアプローチとして,「非負値行列因子分解」に着目し,同方法論をベースとした予測モデルを提案した.同方法を用いることで,従来モデルより細かい旅行サービス変化に対する感度を扱うことができ,格段な精度向上が期待できる.さらに,北陸新幹線の開業効果に着目した分析を行うことで,新幹線整備に対して旅行量の増加が大きい「時期・属性」などを明らかにすることができた.具体的には,お盆・ゴールデンウィークなどにおける30-40代の人の旅行行動は非常に感度が低い一方で,通常の土日における50-60代の人の旅行行動は新幹線整備により大幅に増加したことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究においては,予定通りの研究成果を得ることができている.しかし,いかの2点においては,計画と異なる形で研究を進めている: (1) データ融合方法 利用予定であった,2015年の全国幹線旅客純流動調査の公表が遅れているため,同じ時点のデータを用いた分析に取り掛かることができない状態であった.しかし,集計・携帯電話位置情報データを非負値行列因子分解に適用する,あるいは2010年度のデータを用いた融合方法の開発において十分に成果の進展があり,公表次第,すぐに確認作業・成果発表に取り掛かれる準備はできている. (2) 旅行回数分布データの活用 研究計画において主要なアイディアとしていた,旅行回数分布情報との融合だが,情報解像度・精度の差異から,本研究プロジェクトの範囲で入手できるデータでは困難であることが明らかになった.そのため,本研究では「時間情報の活用」のほかの手段である季節変動などの点に注力し,実績に挙げたような研究成果を得ることに成功している.なお,本研究プロジェクトの範囲で得られる旅行回数分布データでは,「需要予測モデル」の開発では十分な解像度がないということが明らかになったが,本成果から得られる「必要なデータの要件」についても分析を進めて成果として記録する予定である. 以上を踏まえて,研究の進展に応じた計画の微修正などがあったが,当初想定していた以上のペースで研究は進んでおり,全体としての進捗状況は,「おおむね順調に進展」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成31年度(令和1年度)は,研究成果のとりまとめとして,以下の2点を進める予定である. 1点目は,当初の予定通り,これまでの研究成果として開発したモデルを用いて,将来予測を実施して都市間旅客交通ネットワーク計画・政策に対する提言を取りまとめを行う.この研究を進めるための準備は,これまでの2年間の研究を通じて十分に完了しており,すでに取り掛かりつつある状態である. 2点目は,これまでの研究成果の対外発表をより多く実施する点である.土木計画学会などを中心に,国際学会を含めて本研究で得られたモデルの成果を積極的に発表することで,より完成度の高いモデルの構築を目指す.
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Causes of Carryover |
この差額は,参加を予定していた国際学会へ投稿した論文が採択されずに,旅費が不要となった文である. レビュー時に受けた指摘の対応は完了しており,次年度に同国際学会に参加するために利用する予定である.
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