2018 Fiscal Year Research-status Report
Multi-scale dynamic pedestrian simulation system for walking behavior analysis in the large station
Project/Area Number |
17K14744
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
柳沼 秀樹 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 講師 (70709485)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歩行者モデル / 離散選択モデル / マルチスケール / 相互作用 / 構造推定 / シミュレーション / HPC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,空間計画の評価を念頭に歩行者の交通行動を精緻に記述するモデルならびにそれらを実装したシミュレーションシステムの構築を試みるものである.これにより,大規模ターミナル駅などの歩行空間を対象としたリノべーション計画の事前評価や設計へのフィードバック,安全性の検討等に資することが期待される. 本年度は,1) Wi-Fiセンサを活用した大規模ターミナルの歩行空間における歩行者行動データの収集.2) 収集データを用いたモデルパラメータ推定と再現性の確認,3) シミュレーションシステムの高速化検討の継続と実装,の3点について研究を遂行した. 本研究のタイトルにあるように,大規模駅空間を対象として研究を進めてきたが,駅内での歩行者挙動データを取得することが困難であったため,駅周辺の歩行空間(地上のペデストリアンデッキならびに地下の歩行者自由通路)を対象として,Wi-Fiスキャナを活用したマクロな流動計測,カメラ画像によるミクロな歩行挙動計測を実施した.これにより,過年度に開発したマルチスケール歩行者モデルのパラメタリゼーションが可能となり,これらデータから推定結果が得られた.また,シミュレーションシステムの高速化では,GPGPUを活用した行列演算を導入することにより,歩行者モデルに採用しているRecursive Logitやマルコフ連鎖配分を高速演算可能であることが仮想ネットワークでの試算結果より確認された. これらの成果により,理論モデル,観測データ,評価シミュレーションを一体的に扱える枠組みを構築することに成功した.さらに,現在進行している実際の歩行空間整備と連携した分析を進めており,理論研究に留まらない実践的な研究として進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に示したとおり,本年度は大きく3つの点について研究を遂行した.下記に各検討内容の進捗状況を示す.また「やや遅れている」と判断した理由についても報告する. 1)については,行政に協力をして頂き,渋谷駅西口における地上のペデストリアンデッキと地下の歩行空間を対象に歩行者挙動データを取得することができた.当該エリアは周辺開発と歩行空間整備が同時に進められている地域であり,本研究で構築している歩行者シミュレーションを適用する上で最適であると考えられる.調査では,Wi-Fiスキャナによる固定観測を複数地点で行い,そこからマクロな歩行者経路データを取得した.また,局所的だが狭隘なビデオ撮影により狭隘な歩行空間におけるミクロな歩行者挙動データを取得した. 2) については,1)で取得したデータを用いて過年度に構築したミクロ・マクロの歩行者モデルのパラメータ推定を実施した.現地調査での知見を踏まえて昇降施設などの変数を導入したが,当初想定して個人の異質性などは有意な結果とならず,引き続きの検討が必要である. 3) シミュレーションシステムについては,高速化を中心に検討を行い,GPGPUによる高速化の検証を行った.しかしながら,上記1)と2)の成果を踏まえた本格実装には至っていない状況にある. 最後に,本研究は「やや遅れいている」と判断した理由は,研究タイトルにある「大規模ターミナル駅」での調査が難航したためである.特に,駅構内にてカメラや各種センサを用いて歩行者データを収集することは,プライバシー保護などの観点から厳しい状況のあり,最終的に調査許可が得られなかった.しかしながら,実データを取得することが本研究を遂行する上で必須であるため,各主体と調整と協議を行う必要が生じ,結果として研究スケジュールが大幅に遅れる結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
本来であれば,本年度で研究は終了となるが,上記に示した理由により研究期間の延長を行った.延長期間では,当初の予定にあった「実空間を対象とした各種施策のシミュレーション分析」を中心に実施する.具体的には,複数の設計案や異常時(災害時の通行止めや施設の一部閉鎖)でのシナリオを作成して提案手法の妥当性を確認する. また,本年度の結果を踏まえて,歩行者モデルのブラッシュアップ,追加データを用いた再現性の向上,シミュレーションシステムの本格実装を進めたい.また,論文投稿や学会発表などの成果公表が行えていない状況にあるため,これらについても上記と平行して実施する.
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Causes of Carryover |
本研究の進捗状況から研究期間の延長申請を行った.次年度に実施する実験等に活用する.
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