2018 Fiscal Year Research-status Report
脳波およびアンケート調査を用いた屋外空間における快適性評価に関する研究
Project/Area Number |
17K14751
|
Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
石内 鉄平 宮城大学, 事業構想学群(部), 准教授 (90527772)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 脳波 / アンケート調査 / 公園緑地 / リラックス度 / CG画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生理学的反応の一つである脳波を用いて、屋外空間における空間構成の違いによる心理的快適さの度合いを定量的に把握するものである。上記の目的を達成するため、特に平成30年度は、開放感・囲繞感の違いによる心理的快適さの度合いを定量的に把握するために、CG画像を用いて公園緑地における構成要素の物理特性である園路幅員、樹高、樹木間隔を変数とし、それぞれ8パタンのCG画像を作成して心理実験のサンプル画像とすることで脳波とアンケート調査による快適さの度合いの差について検証した。その結果、主に下記3点の結論が導かれた。 1) CG画像を用いた脳波とアンケート結果の比較から、園路幅員の変化による脳波およびアンケート結果のリラックス度の挙動は一致する。また、園路幅員が狭いほど安静指数とともにリラックス度も低下することが確認された。 2)植樹間隔の変化による脳波とアンケート結果によるリラックス度において不一致が生じた被験者は、従来の既存研究とは異なり、閉鎖的な緑地空間でリラックスする傾向が見られた。また、詳細なアンケートの結果と照合した場合、閉鎖的な緑地空間でリラックスした被験者は中学生までに住んでいたところ・育った環境に緑が少ない傾向があることが確認された。 3)因子分析の結果、因子軸としては「心地よさ」と「開放感」が見出された。「心地よさ」軸は植樹間隔の影響を強く受け、「開放感」軸は樹高、園路幅員、植樹間隔に影響を受けることが分かった。また、開放感軸において顕著な値を示した画像は心地よさ軸において負の方向に評価され、心地よさ軸において正の方向に評価されている画像は開放感軸においては小さい値をとる傾向があることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29・30年度の実施計画に挙げられていた項目、公園等の緑地におけるリラックス効果に着目し、CG画像を用いた構成要素の物理特性の変化に基づく開放感・囲繞感の違い・心理的快適さの度合いについては、定量的に把握することができた。 また、駅駅空間や公園等の緑地、街路空間といった現地における脳波観測およびアンケート調査の実験も一部完了しており、現在、その結果を分析するとともに研究成果として整理し、論文投稿に向けて最終の分析作業に入っている。加えて、駅駅空間や公園等の緑地、街路空間といった現地における脳波観測およびアンケート調査についても、既に静止画で動画による心理的イメージの違いを検証し、心理的快適さの度合いを定量的に把握する際の調査手法による違いがもたらす結果の差異についても検証作業を進めている。この成果については、本研究の最終年度に研究論文として結果を広く周知・公表するための準備を進めている。 本研究では、上記の研究に着手し調査を進めるとともに、データ分析および研究成果の取り纏めに取り組んでいることから、進捗状況としてはおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度の実施計画は、駅駅空間や公園等の緑地、街路空間といった現地において、主にこれまで得られた研究成果である脳波観測およびアンケート調査の実験結果と被験者の属性との関連性、CG画像を用いた緑量や園路幅員等による心理的快適性評価の違い、そして被験者の育った環境や日常生活などといった属性による風景に対する心理的快適性の違いに関して本研究の成果として言及することであり、現在、その目標を達成するために分析作業を進めている。 さらに、心理的快適性評価を計測する手法論として、風景のサンプルとして静止画および動画による違いを室内実験により明らかにするとともに、その再現性についても検証作業を進めている。本研究における最終年度は、これまでの成果である屋外空間における空間構成の違いによる心理的快適さの度合いを定量的に把握するため、現地における脳波およびアンケート調査による心理的快適性評価の差異、被験者の属性が結果に及ぼす影響、CG画像により定量的に風景の物理特性を調整した画像による心理的快適性評価を検証するとともに、静止画・動画を用いた脳波およびアンケート調査による比較検証実験についても実施し、これまでの成果を総括して、本研究の目的に応じた結論を導く予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度に使用する予定であった分析に用いる高価な備品については、従来から保有している簡易的な分析機器を用いることで、ある程度の傾向を捉えることができたことで研究を遂行することができた。しかしながら、次年度以降は研究成果を詳細に整理しまとめることが必要になるため、購入時期を次年度に移動するに至り、研究計画に基づいて研究を遂行する予定である。 加えて、今年度は研究結果の信頼性を担保するために、屋外での心理実験および室内での心理実験をより多く実施したことで、得られたデータ量が膨大となった。そのため分析作業に多くの時間を要することになり、その研究成果を行うための機会が少なくなった。次年度は、多くの本研究における研究成果が蓄積されている関係上、あらゆる学会の研究論文に投稿するとともに、本研究の成果を広く周知・発表するために研究費を活用する予定である。
|