2019 Fiscal Year Research-status Report
脳波およびアンケート調査を用いた屋外空間における快適性評価に関する研究
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17K14751
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
石内 鉄平 宮城大学, 事業構想学群(部), 准教授 (90527772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳波観測 / アンケート調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生理学的反応の一つである脳波を用いて、屋外空間における空間構成の違いによる心理的快適さの度合いを定量的に把握するものである。上記の目的を達成するため、特に令和元年度に試みたCG画像を用いた心理実験、開放感・囲繞感の違いによる心理的快適さの度合いについて定量的に把握した結果をもとに、令和元年度は、樹高によって開放感・囲繞感が異なる実空間において、アンケート調査と脳波観測結果の相違を比較・検証した。本研究で得られた結果を以下に示す。 1)開放的な緑地でアンケート調査と脳波観測結果の一致率が約9割と最も高く、次いで閉鎖的な緑地での一致率が約7割を占めた。公園緑地は一般的にリラックス効果があるとされているが、緑視率が高く、空の面積の割合が低いといった囲繞性の高い閉鎖的な緑地では、開放的な緑地と比較しその圧迫感からリラックス度が落ちるという従来の既存研究と一致する結果となった。 2)閉鎖的な緑地においてリラックスすると回答した被験者は、その理由についてアンケート調査の自由記述から、「背の高い樹木の存在」や「街路樹の多い歩道」、「薄暗い森」といった開放的な緑地でリラックスすると回答した被験者からは得られない閉鎖的な空間を好む嗜好を把握することができた。 3)駅および道路空間において、脳波とアンケート調査結果に大きな不一致が確認された。アンケート結果と照らし合わせることで、日常的に利用している空間では、アンケート調査でストレスを感じると回答していても、脳波結果ではリラックスしている可能性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果によって、実施計画の一つに挙げられていたCG画像を用いた構成要素の物理特性の変化に基づく開放感・囲繞感の違い・心理的快適さの度合いについて、定量的に把握することができた。そして、昨年度の研究成果として実空間における脳波観測およびアンケート調査結果も蓄積されている。その一方で、調査結果を分析し研究成果として整理を進める中で脳波観測とアンケート調査結果に大きな不一致が確認された。その不一致の原因究明は、本研究の当初の目的を達成するためには非常に重要な観点であり、より詳細な調査を継続して行う必要性が生じたことから、研究計画を当初の3年間から4年間に延長することとした。その結果、本年度の研究成果として脳波とアンケート調査結果に大きな不一致が生じた原因として、被験者の日常生活のパタン、空間の利用頻度にある可能性が見出された。 現在、論文投稿に向けて最終の分析作業に入っている。これまでの成果については、本研究の最終年度に研究論文として結果を広く周知・公表するための準備を進めている。 また、本研究では研究当初に予定していた現地調査におけるデータ収集・分析について、信頼性担保の観点から当初の研究予定以上の回数に実施しており、それに応じて研究成果の取り纏め作業にも取り組んでいる。今回研究期間の延長が認可されたことで、進捗状況としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度の実施計画は、実空間における脳波観測およびアンケート調査の実験結果と被験者の属性との関連性、CG画像を用いた緑量や園路幅員等による心理的快適性評価の違い、そして被験者の育った環境や日常生活などといった属性による風景に対する心理的快適性の違いについて本研究の成果として言及することであり、現在、その目標を達成するためにデータ整理・分析作業を進めている。 本研究における最終年度は、これまでの成果である屋外空間における空間構成の違いによる心理的快適さの度合いを定量的に把握するため、現地における脳波およびアンケート調査による心理的快適性評価の差異、被験者の属性が結果に及ぼす影響、CG画像により定量的に風景の物理特性を調整した画像による心理的快適性評価を検証し、これまでの成果を総括することで、本研究の目的を達成する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に使用する予定であった分析に用いる機器については、従来から保有している簡易的な分析機器を用いることで、ある程度の傾向を捉えることができたことで研究を遂行することができたため購入を見合わせた。また今年度は、これまで研究結果による新たな発見に加え、より詳細な調査、信頼性を担保するための心理実験をより多く実施したことで、得られたデータ量が膨大となった。そのため分析作業に多くの時間を要することになり、研究期間を1年間延長することとした。 次年度は、研究成果を詳細に整理しまとめることが必要になるため、購入時期を見合わせた機器を調達し、当初の目的達成を目指して研究を遂行する予定である。加えて、最終年度である次年度は、関連学会に研究論文を投稿するとともに、本研究の成果を広く周知・発表するために研究費を活用する予定である。
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Remarks |
本研究は、本科学研究費補助金のテーマである屋外空間の評価における脳波観測およびアンケート調査法により違いを定量的に把握するものであり、その成果の一部がScience Impact 社の研究雑誌に掲載されてものである。
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Research Products
(1 results)