2021 Fiscal Year Research-status Report
脳波およびアンケート調査を用いた屋外空間における快適性評価に関する研究
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17K14751
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
石内 鉄平 宮城大学, 事業構想学群, 准教授 (90527772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳波観測 / アンケート調査 / CG空間 / 現実空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生理学的反応の一つである脳波計測および紙面によるアンケート調査によって、異なる手法論による屋外空間の構成に対する心理的快適さの度合いや違いを定量的に把握するものである。上記の目的を達成するため、これまでに実施してきたCG画像を用いた心理実験、開放感・囲繞感の違いによる心理的快適さの度合いといった定量的な結果をもとに、特に令和3年度は、樹高によって開放感・囲繞感が異なる実空間において、アンケート調査と脳波観測結果の相違を比較・検証するため、研究成果およびデータの取り纏めを実施した。これまでに本研究を遂行することで得られた結果を以下に示す。 1)CG画像を用いた脳波とアンケート結果の比較から、園路幅員の変化による脳波およびアンケート調査結果のリラックス度の挙動は一致することが確認された。また、実空間における調査結果からも同様に園路幅員が狭いほど安静指数とともにリラックス度も低下することが確認された。 2)既存研究により、公園緑地は一般的にリラックス効果があるとされているが緑視率が高く、視界に占める空の面積の割合が低いといった囲繞性の高い閉鎖的な緑地では、開放的な緑地と比較しその圧迫感からリラックス度が落ちるという従来の研究と一致する結果となった。 3)既存研究とは異なり、閉鎖的な緑地においてリラックスすると回答した被験者は、その理由についてアンケート調査の自由記述から開放的な緑地でリラックスすると回答した被験者からは得られない閉鎖的な空間を好む嗜好が把握された。さらに、閉鎖的な緑地空間でリラックスした被験者は中学生までに住んでいたところ・育った環境に緑が少ない傾向があることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究成果として、公園等の緑地におけるリラックス効果に着目した際、CG画像を用いた構成要素の物理特性の変化に基づく開放感や囲繞感の違い、心理的快適さの度合いについて定量的に把握することができた。 また、駅空間や公園等の緑地、街路空間といった現地での脳波観測およびアンケート調査の実験も完了しており、現在、その結果を分析するとともに研究成果として整理し、論文投稿に向けて最終の分析作業に入っている。さらに、駅空間や公園等の緑地、街路空間といった現地における脳波観測およびアンケート調査についても、既に静止画で動画による心理的イメージの違いを検証し、心理的快適さの度合いを定量的に把握する際の調査手法による違いがもたらす結果の差異に関する検証作業を進めている。 その一方で、これまでの研究成果として得られていた脳波とアンケート調査結果に大きな不一致が確認された要因の究明は、本研究の目的を達成するためには非常に重要な観点である。 実験データの収集のために研究期間を延長して追加調査を行ったことで、令和2年度の研究成果として脳波とアンケート調査結果に大きな不一致が生じた原因は、空間の利用頻度が最も強い要因である可能性が見出される中、令和3年度にはその原因究明に向けた検証を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染状況が収束に向かっていない状況から、その検証作業が予定通り進んでいないことが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和4年度は、論文のデータ取り纏め、成果発表に伴う研究費使用を予定しており、これは申請時の予定と同様である。これまでの研究成果として、新たな発見に加え、より詳細な調査、信頼性を担保するための実験をより多く実施したことで、得られたデータがさらに蓄積された。 上記により、令和3年度は研究成果を詳細に整理しまとめるための期間となり、研究計画に基づく研究を遂行するため、得られた結果の正確な解釈に向けて検証作業を進める予定であったが、先般の新型コロナウィルスの感染が収束に向かわない現状から、被験者を伴う本研究は予定どおりに遂行することが難しい状況にあった。令和4年度は本研究における多くの成果に加え、結果の正確な解釈に必要な検証作業を進め、関連学会の研究論文に投稿するとともに、本研究の成果を広く周知・発表するために研究費を活用する予定である。
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Causes of Carryover |
これまでの研究成果により、新たな発見に加え、より詳細な調査や信頼性を担保するための実験をより多く実施したことで、データがさらに蓄積されてきた。それにより、研究成果をまとめる中で、研究目的を遂行するためにはデータの正確な理解や解釈が必要となりその検証作業を要することがわかった。 しかしながら、得られた結果の正確な解釈に向けて検証作業を進める予定であったが、先般の新型コロナウィルスの感染が収束に向かわない現状から、被験者を伴う本研究は予定どおりに遂行することが難しい状況にあった。そのため、研究期間を延長することで令和4年度は本研究における多くの成果に加え、結果の正確な解釈に必要な検証作業を進める予定である。使用計画としては、検証作業を実施することで得られた正確なデータに基づく成果を広く周知するため、学会参加や査読論文への投稿に向けた参加費や査読・論文投稿費、論文掲載費として使用する。
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