2017 Fiscal Year Research-status Report
Methodology of performance-based design of tuned mass damper effective in reducing seismic response in steel structures
Project/Area Number |
17K14756
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 健作 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (00715279)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | TMD / 同調質量ダンパー / 制振 / 超高層建物 / 長周期地震動 / 応答スペクトル法 / 減衰定数 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
鋼構造建物に地震対策用の同調質量ダンパー(TMD)が導入される場合について,その制振効果を理論的な側面から研究した。まず,架構に全体曲げ変形が生じ層間ダンパーの制振効率が低下する塔状比の大きな建物について,TMDの有効性を議論した。建物全体を片持ち梁と見做し,これに細長比の概念を導入して,全体曲げ変形により喪失する等価減衰定数を定量化した。さらに,高減衰系に対してTMDを設置する場合について,設計上の特別な配慮を整理した。これらの知見をもとに,時刻歴解析を用いない応答予測法を提案した。これにより,応答低減が困難な細長い形状の建物に対して,必要なTMDの質量が即座に判断可能になった。 次に,建物の架構が弾性範囲を超える場合を対象に,TMDの適切な剛性調整法を分析した。非線形不規則振動解析を通じて,建物の変位あるいは加速度応答を最小化する最適設計式を提案した。変位応答の低減には,建物の最大変形に基づく等価固有周期に同調するようTMDを設計すればよく,加速度応答の低減には,建物の弾性時と最適なTMDの剛性が変わらないことを明らかにした。これら両者について,TMDの最適設計式を提案し,小地震から大地震までの様々な地震動に対して,建物の変位応答と加速度応答低減の両立を図る制振設計法を示した。 さらに,TMDによる建物の高減衰化により,非構造部材の損傷低減の可能性を定量化した。まず,建物と非構造部材が共振する場合の動的応答倍率を地震動の継続時間から整理した。地震動の継続時間が動的応答倍率に及ぼす影響は小さいことを理論的に明らかにし,多数の観測地震動を用いた時刻歴地震応答解析を通じ,理論の正しさを実証した。これを踏まえて,時刻歴解析をせずに,TMDが設置された建物の床応答スペクトルを評価する手法を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では解析が主体の研究であり,当初の計画通り順調に進んでいる。二年目に取り組む計画であった内容も,おおよそ研究が完了している。これに加えて,TMDによる非構造部材の地震損傷低減を定量化する研究も進めた。これは当初の研究計画にはなかったことである。現在の社会状況では,TMDは既存超高層建物の制振改修に使われることが多く,室内被害軽減に果たすTMDの役割の理解が重要と考えたため,当初の研究計画よりも幅を拡げて研究を進めた。また,一年目までの研究成果を国際会議7WCSCMで報告する予定である。研究を進めると同時に,地震対策用TMDが社会により理解されるよう,前倒しで活動を進めてきた。 なお,構築した理論を検証するために多数の時刻歴解析が必要であったが,並列計算の導入により数値計算にかかる時間の問題を解決した。今後も負荷の高い計算を数多く行う予定であるが,今後の計画に大きな変更はない。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目に予定していた研究を前倒し,TMDの信頼性をより向上させるため,確率的評価に着手する。一般に,TMDは建物の剛性変動に対して,ロバスト性が低いと認識されている。そのため,建物の剛性評価の不確実性に関して,TMDの制振性能のばらつきを定量化することが,普及に向けて重要である。手法は当初計画していた通りとするが,建物の構造特性の現実的なばらつき範囲がどの程度であるかも調査する。 また,建物のみならず,立体自動倉庫などに地震対策用TMDを用いた場合の地震被害軽減の理解にも繋がるように,本研究を通じて得られる知見をなるべく一般化する。本研究では,TMDと建物を抽象化して理論の体系を構築してきたため,このような展開が容易となる。 この抽象化の一方で,今後はより実務的な展開を図っていくために,現実に即した研究も進めていく。例えば,梁柱要素でモデル化した高層建物の骨組モデルに対して,想定される長周期地震動を入力し,その詳細を検討するなどである。現実的な建物解析モデルによる振動アニメーションにより,構造技術者以外の人にも理解が深まることが期待される。そのようなコミュニケーションを通じて,構造設計者や技術者らに意見を伺いながら,地震対策用TMDの普及がより進むよう,弾力的に研究を行う。 さらに,日本建築学会の国際ジャーナルJARへの投稿や,その後のセミナーなどでの講演などを通じて,国内・国外に研究成果を積極的に発信していくため,先んじて情報整理をしておく。本研究課題で目標とするTMDの応答指定型設計法の構築に留まらず,その活用を見越して研究を迅速に遂行する。
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Causes of Carryover |
二年目に現実的な建物の振動解析を実施するにあたり,汎用有限要素解析コードとプリポストプロセッサソフトウェアFemap with NX Nastranを購入する計画のため。
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