2017 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation on Structural Performance of Tall Reinforced Concrete Buildings Including Time Dependent Behaviors
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17K14763
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
堀川 真之 日本大学, 工学部, 助教 (50794525)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高層鉄筋コンクリート造建物 / 収縮 / クリープ / 初期応力 / 長期挙動評価 / 短期挙動評価 / 三次元FEM解析 / ファイバーモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,①部材レベルにおける長期挙動予測モデルの構築および②高層骨組の長期挙動評価という2つの研究課題について重点的に取り組んだ。また,継続的に行っている文献調査結果から,「初期応力導入手法の開発」に時間を要すると判断し,平成30度着手予定の課題を前倒して取り組んだ。以下に得られた研究実績の概要を示す。 (1) 乾燥収縮および長期クリープを考慮したRC部材の長期挙動予測モデルを構築した。 (2) (1)によるモデルを適用し,60層純フレーム建物の長期挙動を予測した。 (3) 初期応力が高強度RC柱の2方向曲げ性能に及ぼす影響を示した。 (1)では,三次元FEM解析により持続荷重を受ける梁部材と柱部材の挙動をモデル化した。ここでは,骨組への展開を見据え,梁要素を選択した。梁のモデル化では,積分点数や材料モデルの検討を通じて,ひび割れの発生を適切に表現可能なモデルを構築した。本モデルによって,長期にわたる梁の曲げ挙動を精度良く予測することが可能である。同様のモデルを用いて,長期軸圧縮を受ける柱の挙動についても妥当なモデルを構築することができた。(2)では,クリープの影響により,特に,中柱の主筋に累積される応力度が増大し,短期荷重時に主筋の早期降伏を促す可能性を示した。また,隅柱では,斜め45°方向の変形が著しく,弾性解析と比較してその変形が約1.6倍に達することを明らかにした。(3)では,ファイバーモデルを用いて,初期応力導入手法を提案・検証し,中柱を対象として2方向曲げ性能について考察した。その結果,初期応力の存在により,①柱の初期剛性,耐力および履歴面積が増大すること,②同一部材角での耐力低下が生じることを確認した。また,初期応力,載荷方向数および破壊モードの関係を整理した結果,2方向曲げを受ける柱では,曲げ降伏後にせん断破壊に至る可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に掲げた研究課題は,「高強度RCに生じる時間依存性が高層RC造建物全体の時間依存挙動に及ぼす影響の把握」であった。本課題に対して,鉄筋コンクリート部材に生じる長期挙動に焦点を絞り,部材のモデル化ならびに骨組への応用を展開した点は当初の予定通りといえる。しかし,研究実績の概要にも示した通り,初期応力導入手法については,検証過程において種々の検討を行う必要性が生じたため,その開発に着手したことで若材齢挙動を考慮した骨組の挙動を評価するには至らなかった。この点については当初期待していた成果を挙げられなかったものと考えられる。しかしながら,本研究の全体像が,①骨組全体の時間依存挙動評価,②時間依存挙動および短期挙動の統合手法の開発,③初期応力を考慮した骨組全体の耐震性能評価に大別されることを考慮すると,①は長期挙動に限定したが,②は達成されたものと考えており,研究の大枠は予定通り進んでいる状況である。以上より,当初計画と比較して若干の違いが生じているものの,研究計画全体の進捗としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の主目的は,ファイバーモデルを用いて初期応力が骨組全体の耐震性能に及ぼす影響を解析的に明らかにすることである。この点については,高層RC造建物の短期挙動を評価可能な解析モデルを構築し,その後,平成29年度に開発したモデル化手法を統合することで検討を進める。特に,クリープの影響が大きい柱部材に着目し,柱の応答と骨組全体の応答を対応付けることにより,時間依存挙動が骨組全体の短期性能に及ぼす影響について検討する。一方,平成29年度の研究成果より,初期応力を考慮した高強度RC柱について曲げ降伏後にせん断破壊に至る可能性が示された。今後,高強度RC柱のせん断特性を表現可能なモデルを構築し,初期応力を考慮することによるせん断破壊の影響を加味した検討が必要になるものと考えられる。本件については,当初想定しておらず,研究を遂行する過程で浮上した新たな研究課題である。しかしながら,重要な検討課題であることから,可能な限り平成30年度内に挑戦したいと考えている。最後に,得られた結果の整理・分析を通じて今後の課題を明確にするとともに,本研究を総括する方向で進める予定である。
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Causes of Carryover |
コンクリート工学会年次大会2017(仙台)では,大会運営にも携わり大会側から旅費等が支払われたことにより,当初申請額との間に差額が生じた。一方,平成29年度は,研究が概ね順調に進展していたことから,当初予定していなかった平成30年度日本建築学会東北支部研究報告集(青森)へ論文を投稿した。平成29年度に生じた差額は,その論文発表のための費用として平成30年度に計上する予定である。その他については,当初計画通りであり,解析ソフトの更新,論文投稿に伴う日本建築学会大会および日本コンクリート工学年次大会への参加費用として計上する予定である。
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