2017 Fiscal Year Research-status Report
住宅周囲の植栽による微気象の変化を考慮した室内熱環境の予測・評価
Project/Area Number |
17K14769
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河合 英徳 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (00735376)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 微気象 / CFD / 換気 / 植栽 |
Outline of Annual Research Achievements |
夏季に良好な屋外微気象が得られる手法として開口部近傍の植栽に散水を行った場合に着目し、多点同時計測システムによる測定結果から気温・風速・湿度の空間分布特性を明らかにした。その結果、蒸発の駆動力である大気飽差と植栽前後における気温差との間に正の相関が見られ、大気飽差が3.0kPaとなる条件において開口部近傍気温が周囲より最大で3℃低下することを確認した。また、植栽の蒸発散効果による全熱の変化から,日中は顕熱を取得せずに窓を開放できる時間が3時間ほど増加し,一定のパッシブクーリング効果が得られる可能性を示した。 また、開口部近傍に配置する植栽の熱収支の分析として、住宅の植栽として用いられることの多いキンメツゲ、シマトネリコ、シラカシを対象とし、多点同時計測システムの実測結果から植栽による風速減衰(抵抗係数)と対流熱伝達率を植栽全体の熱収支・運動量収支により同定した。その結果、風速と正の相関をもつ植栽の対流熱伝達率が得られた。植栽による冷却効果や風速の減衰の詳細については今後実施するCFD(数値流体力学)解析等の結果を踏まえ、予測精度の向上について検討を行う。 さらに、実市街地における開口部近傍の微気象ゾーンモデルの適用性を確認するために低層建物が並ぶ市街地を対象として観測結果より屋外熱放射環境の実態を明らかにした。その結果、高層集合住宅や周囲の住宅によって日射遮蔽・蓄冷された地物により周囲よりも1~2℃低い気温場が形成されることを確認し、開口部近傍における気温の低下による建物熱負荷・室内熱環境への影響を明らかにした。今後この知見も活用し、開口部近傍の微気象ゾーンモデルにおける境界条件の設定方法やゾーンモデル内の微気象の空間分布のモデル化について検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は多点同時計測システムにより測定された植栽の周囲における気温・風速・湿度の空間分布特性から、植栽と蒸発冷却による開口部近傍気温の低下について気温や大気飽差などの気象条件との関係を整理することができた。一方で、植栽による風速低減効果および関連パラメータの同定には精度上現状でばらつきがあり、その評価方法について今年度実施予定のCFD解析による微気象の空間分布の把握とともに検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
局所的な微気象の空間分布を考慮しながら室内における期間的な気温・湿度変化を予測する方法を構築するために、CFD解析により開口部近傍に形成される微気象の空間分布を把握したうえで、①植栽の表面積、形状などのパラメータに基づく冷気の生成効果を予測する方法の検討、②植栽から発生した冷気の室内への移流・拡散過程をマクロに予測するモデルの構築を実施する。
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