2018 Fiscal Year Research-status Report
海のコモンズの仕組みと文脈から考える小規模漁村に向けた事前復興計画の提案
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17K14779
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下田 元毅 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30595723)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コモンズ / 地域組織 / 鰤株組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,復興過程における東北地方の漁村の現在を検証しながら,来るべき紀伊半島の災害に向けて小規模漁村の事前復興計画を提案する事を目的としている。東北では全般に災害後の市街地復興が先行しているが,小規模漁村は市街地復興と連関した地域経済構造であることから市街地と並行して事前を備える必要がある。 小規模漁村地域の生産を担保する漁業権の歴史は,概ね江戸時代における入会慣習が明治,昭和にかけて複雑な管理,利用の権利関係を法律に置き換えて成立してきた経緯がある。そのため,事前復興計画を立案するにあたり,漁業権やその管理・仕組みなど過去から将来へと連綿と受け継ぐべき海側の文脈の視点が必要である。 2018年度は,被災後のコミュニティの復興及び再編の視点から,コミュニティ調査を中心に行った。コミュニティ調査は,地域組織がそれぞれの地域の今日的な問題や課題などを解決しながら,まちづくりを行っている活動主体を指す。また,筆者自身も地域組織立ち上げに関わった。地域組織が主体的なまちづくりに参画することで,事前にコミュニティの形成ができるだけでなく,被災時や被災後の復興コミュニティの中心になることが期待できる。具体的には,三重県尾鷲市においてNPO法人おわせ暮らしサポートセンターを2018年4月に設立した。当該NPOの業務の第1は,移住・定住促進を目的とした空き家バンクの運営である。漁村への移住・定住を促進させるため,キーパーソン(区長,地域おこし協力隊員,空き家バンクを利用した移住者など)にNPOの会員となってもらい,NPOと住民とのインターフェイスを担う。移住と空き家活用は,既成漁村空間と住民に対し,新たな地域形成の契機となっている。さらに,自治体との連携も備えていることから,この組織を中心に事前復興計画案を当該地域からの意見交換の場として活用していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.海のコモンズ調査:東紀州に明治期から現存する鰤株組織の形態とその役割の変遷に関して,紀北町,尾鷲市の株組織が現在も機能している錦浦,島勝浦,九鬼浦,早田浦,梶賀浦の調査及び変遷図の作成を行った。 2.高台移転整備計画:高知県須崎市市街地調査及び高台整備移転計画のゾーニング図の作成を行った。 3.三重県尾鷲市においてNPO法人おわせ暮らしサポートセンターを2018年4月に設立した。当該NPOの業務の第1は,移住・定住促進を目的とした空き家バンクの運営である。尾鷲市は「漁村の連合体」の自治体あり,各集落のコミュニティが独自性を持っていることが特徴である。このような集落への移住・定住を促進させるためには,キーパーソン(区長,地域おこし協力隊員,空き家バンクを利用した移住者など)にNPOの会員となってもらい,NPOと住民とのインターフェイスを担う。移住と空き家活用は,既成漁村空間と住民に対し,新たな地域形成の契機となっている。さらに,自治体との連携も備えていることから,この組織を中心に事前復興計画案を当該地域からの意見交換の場として活用していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であり2019年度は,三重県尾鷲市九鬼漁村,和歌山県海南市塩津漁村,高知県須崎市市街地を対象地とし, 事前の備えとしての計画案策定(Phase1~4)を予定している。各Phaseと主な内容は,Phase1:被災前(被災後の拠点整備,高台移転整備),Phase2:被災直後(事前に設定済みの避難経路や一時避難地点の利用,瓦礫撤去,仮設住宅建設),Phase3:被災2年後(仮設住宅撤去と常設住宅への移住),Phase4:被災5年後(新規居住地のコミュニティの形成,被災地区における次の事前復興計画に向けた議論)を想定としている。計画案は地域に提案を行った上で,ワークショップを開催し,地域側の意見をもらいながら計画案をブラッシュアップしてきたい。いずれの対象地小規模な漁村地区やその地区を含むことから,漁業の再興を見据えた方向性も合わせて提示していく。そのため,各地域の整理しつつある海のコモンズに関する特性を事前復興計画案に盛り込み,土地利用としての図面だけでなく,漁村空間の仕組み・運用に関する内容とする。成果物は,計画図だけでなく方策内容を盛り込んだ内容とし冊子としてまとめる予定である。さらに,提案を行う各地域の地形模型(1/1000)を制作し,地域住民にもひろく理解できるアウトプットを予定している。 地域住民の意見をどこまで盛り込んでいくのか,また,ワークショップの内容とその進め方について課題を抱えているが,有識者にも意見をもらいながら進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
東北への調査の回数が減ったため。 次年度は,東北調査及び計画案作成のための調査回数が増えることにより旅費と計画案作成のための物品調達翌年分の助成金と合わせた金額が必要となる。
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