2018 Fiscal Year Research-status Report
カルスト地形特有の地質構造が産業都市形成と居住環境に及ぼした影響
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17K14780
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
牛島 朗 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (40625943)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地質 / 地形 / 生産 / カルスト / ウバーレ / ポノール / 湧水地 / 建築構法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、秋吉台周辺の集落に関して現地でのフィールドワークを実施するとともに、公的機関(法務局・地方自治体等)などが所蔵する個別の土地利用等に関連した詳細な資料の収集を実施している。それにより、今後対象地域の歴史的な産業構造の変化が、集落の空間構成及び個々の景観構成要素に及ぼした影響の具体的な検証が可能となる。 また、具体的なカルスト地形内の集落において実施した複数の家屋等の調査により、集落内で約80年前に生じた大火が、その後の集落復興及び家屋の再建に大きな影響を及ぼし、独自の地形・地質条件と相まって、固有の集落景観が形成されるに至っていることが明らかとなった。その際に、周辺地域の建築技術の流入等も生じたと考えられ、技術史・文化史的な観点も含め、より広域的な実態調査を経る事で、各地域間の関連や特性も明らかに出来ると考えられる。 対象地域の地質条件は、一般的な米作を中心とする農業には不適とされるが、埋蔵地下資源の存在や、気候や土壌に根差した商品作物の栽培などの場として、固有の生活・生産の為の空間が形成されており、その特殊性は当該地域の文化的価値を高めるものとして位置づけることが出来る。 また、一見不可視である地下の構造が広域的な水系などにも影響を及ぼしており、各居住地の立地やコミュニティの在り方などを規定する要素となっている事が考えられることから、個別の要素のみならず、それらを連関する仕組みの解明のための作業が今後必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回、建築物に関するフィールドワークと並行して新たな過去の土地利用状況に関する資料が得られたことにより、より詳細な空間構造の解読作業が必要となっている。これは当初予定してなかったプロセスであるが、建築的な分析に加え、周辺の土地利用と合わせて、今後重層的な解析を試みることで、対象地域の特性をより明確に浮かび上がらせる事の出来る貴重かつ重要なデータと位置付けている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに作成を行った広域的なデータベースに、フィールドワークにより得られた個々の情報を加味し、地域構造の分析を試みることで、秋吉台周辺の居住環境としての特性を横断的に把握する事が可能になる。さらに、追加の資料や調査により得られた情報を元に、生活・生産の場としての実態解明を合わせて試み、特殊な地質・地形条件化の営みの在り方についても検証を行う予定である。その際、引き続き他分野の研究者の協力などを仰ぐことで、学術的な成果としての完成度を高め、学会等で発表を行うとともに、今後の地域計画に向けた有益な知見となるよう成果の取りまとめを行いたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた解析作業に関して,使用するデータの入手に時間を要した為、未着手の解析作業が発生し,年度内での謝金予定使用額に満たなかった。但し,平成30年度末に新たなデータが揃えられた為,新たな年度に入り,早急に予定していた解析作業を実施するとともに,並行して当初計画の進行と合わせ,追加調査及び解析データを用いた成果作成作業を行う。
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