2017 Fiscal Year Research-status Report
近世建築生産史における「大工棟梁」の組織と技術に関する研究
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17K14796
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山岸 吉弘 日本大学, 工学部, 助教 (40454201)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大工組織 / 大工技術 / 大工棟梁 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究全体における初年度の位置付けは、二つ設定した課題の一つ目である<大工棟梁モデルの構築>を達成することにある。これまでに相模国・武蔵国を中心とする東国に注目し、各地域を代表する大工棟梁を個別に取り上げ、組織や技術に関する研究を実施してきた。それら研究の成果を改めて見直し総合することで、大工棟梁の存在を相対化・一般化することが可能であり、モデルとして構築することを目指している。 その指標として、鷲宮神社の普請を辿ることが適当な手掛かりになるという見解に至った。鷲宮神社は関東地方のほぼ中央に位置し、歴史は古く古代にまで遡る。繰り返し行われてきた社殿の造営に関する史料が今に遺されており、中世以後の内容を具体的に知ることができる。各時代における普請に携わった職人などの変遷を追い、相互に比較することで地域性や時代性といった観点から特徴を明瞭に把握することができる。 更に、鷲宮神社の普請に携わった古河町の職人を比較の対象に加える。古河町は古河藩の城下町として計画的な移住・居住がみられ、多くの大工が生活していた。一方で、職人の数や技術は一定してはおらず、盛衰を経ていることが明らかとなった。必ずしも都市域の職人が優位にあるのではなく、農村域の職人が大工棟梁として仕事をこなす場合もあり得る。大工棟梁という個人の役割が大きいことを指摘することができた。 鷲宮神社の事例を時間軸に、古河町の事例を空間軸に、それぞれ設定することで大工棟梁のモデルを立体的に構築することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、これまでの研究で蓄積したデータを改めて見直し、個別に検討してきた大工棟梁の存在を相対化・一般化することにある。そのために必要な視点を時間軸と空間軸の双方から得ることができ、今後の研究に繋がる成果となった。大工棟梁のモデルを構築する上で、客観視することのできる視点を獲得することが最も重要であったため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築したモデルを検証する作業を実施する。東国の大工棟梁を相対化・一般化する試みの当否を検証するために、具体的な事例と比較する。これまでの研究成果を踏まえ関東地方の大工棟梁を取り上げる他、南東北地方まで視野を広げ、個々の大工棟梁の内容や特徴を把握する。その後、モデルと対照させることで、その有効性や妥当性を分析する。
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Causes of Carryover |
必要なデータが想定以上に充実し、分析・考察に多くの時間を割くことができた分、調査回数が減少したために経費がかからず、次年度使用額が生じた。一方で、分析・考察の結果を検証するために必要な新たなデータを収集するために調査が必要であり、次年度以降に予算を使用する計画である。
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