2018 Fiscal Year Research-status Report
国鉄駅舎の戦災復興としての民衆駅の建設に関する研究
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17K14798
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石榑 督和 東京理科大学, 工学部建築学科, 助教 (10756810)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民衆駅 / ターミナル駅 / ハブ駅 / 駅ビル / 鉄道 / 区画整理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、次の駅の民衆駅を対象に現地調査と資料調査を行なった。すなわち、東北地方の秋田駅、盛岡駅、山形駅、福島駅、関東地方の目黒駅、蒲田駅(東・西口)、大宮駅、吉祥寺駅、本八幡駅、船橋駅、千葉駅、中部地方の岐阜駅、尾張一宮駅、四日市駅、豊橋駅、津駅、九州地方の戸畑駅、博多駅、八幡駅、小倉駅、門司駅、別府駅である。このうち全ての駅び現地調査に行くとともに、地元図書館・公文書館において資料調査を行なった。さらに、秋田駅、盛岡駅、岐阜駅、尾張一宮駅、豊橋駅については、民衆駅会社もしくはその後継企業への聞き取り調査も行なった。 このうち最も成果があったのは秋田民衆駅についてである。秋田民衆駅は老朽化を原因として改築された駅であるが、駅建設は駅前とその周辺の区画整理事業を行い、駅舎用地を確保することで進められている。こうした都市計画と建設の経緯が克明に記録された資料が保管されており、地方都市の民衆駅の具体的な形成過程を知ることができた。また、民衆駅の構内営業者として指定を受けた秋田ステーションデパート(初代社長=秋田市長)には、営業者として市街地の有力な商店が入っていたことも明らかになり、戦後の地方都市の形成とともに駅の変化を考える上でも重要な事例研究となった。 他方で、これまでの研究成果をもとに、分担執筆として寄稿した『日本都市史・建築史事典』のなかの「都市復興と戦後民主主義」の項目で、戦後の都市復興の重要な要素として民衆駅を位置付けた。これまでの近現代日本都市史研究の中ではほとんど言及されることがなかった民衆駅を、通史の中に位置付けたという意味で重要な成果であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に報告した通り、1箇所の対象地の調査にかかる時間が当初想定よりも必要であるため、当初予定よりもやや調査が遅れている。最終年度に残された調査対象地が当初予定よりも若干多いが、本年度は重要な事例となる秋田民衆駅の調査に時間を割くことができ、地方都市の民衆駅の建設経緯と都市計画との関係を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2019年度では、残された対象地(川崎駅、鶴見駅東口、横浜駅西口、池袋駅、宇都宮駅、水戸駅、沼津駅、札幌駅、旭川駅、帯広駅、釧路駅、新潟駅、高岡駅、富山駅、金沢駅、福井駅、松江駅、徳山駅、西鹿児島駅、和歌山駅)の調査を9月中に終え、その後資料整理、分析を行い、研究成果をまとめる。研究成果は、書籍として公開することを想定しており、2019年度内に草稿をまとめ出版社との調整を進めたい。
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Causes of Carryover |
調査出張に当初計画よりも日数をかけたため旅費が増え、当該年度の支出額が当初請求額を超えたため前倒し請求を行なった。当初請求額を超えてかかった旅費と、前倒し請求額の差額が次年度使用額となった。翌年度請求額とともに調査旅費として使用する。
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