2018 Fiscal Year Research-status Report
フラックス法による酸化物結晶育成技術の深耕と大型光電極作製への挑戦
Project/Area Number |
17K14809
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 清香 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (40790308)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フラックス法 / 結晶成長 / 酸化物 / 光触媒 / 窒化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,TSFG(Top Seeded Flux Growth)法にてセンチメートル級の大型な酸化物結晶を育成することを目標の一つとする。特に,紫外光応答型の水分解用光触媒として知られ,窒化により可視光応答型光触媒であるTa3N5に変換できるNaTaO3を目的結晶とする。また,NaTaO3がTa3N5に窒化する挙動や過程を調査することを目的とする。平成30年度は,TSFG法の種子結晶として用いるためのミリメートルサイズのNaTaO3結晶をフラックス育成することに注力した。また,窒化の際の課題を抽出するために,ミリメートルサイズのNaTaO3結晶の窒化を試みた。 昨年度の研究から大型結晶が得られることがわかっているNa2MoO4をフラックスとして用い,保持温度1500℃・徐冷にて結晶を育成したところ,生成結晶サイズが増大した。最大で8.0mm×4.7mm×0.04mmの板状結晶が得られた。 1.5mm×1.0mm×0.03mm程度の板状NaTaO3結晶を窒化すると,黒色に変化し,Ta3N5にほとんど変換されなかった。元素分析および表面観察の結果,板状NaTaO3結晶の表面にCaMoO4粒子の付着が見られた。フラックスとして用いたNa2MoO4由来のMoと電気炉由来のCaが原因と考えられた。このCaMoO4不純物を除去するためにフッ酸で処理した。NaTaO3結晶の表面をフッ酸で溶解することでCaMoO4が除去されることを確認できた。フッ酸処理したNaTaO3結晶を窒化すると,未処理結晶に比べて窒化が進行し,XRD分析にてTa3N5の生成量の増大を確認できた。また,XRD分析より,Ta3N5の配向が確認された。NaTaO3およびTa3N5の結晶構造から,NaTaO3結晶の結晶面の影響を受けてエピタキシャル成長に類似の様式でTa3N5に変換されたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常のフラックス法にて,昨年度を超えるサイズにNaTaO3結晶を大型化できた。窒化の挙動や過程を調査できるミリメートルサイズのNaTaO3結晶が安定して得られる条件が見つかったため,窒化の実験に着手した。その結果,窒化が進行しないことが判明し,その課題の解決方法を見出した。また,NaTaO3からTa3N5への変換の際の結晶学的な新たな知見が得られた。 以上は予定していたとおりの到達内容であり,一定の成果を得ることができたため,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,TSFG法によるNaTaO3結晶のさらなる大型化に取り組む。結晶化温度や結晶が大型化する温度領域を調査し,結晶育成期間の短縮(効率的な結晶の大型化)を模索する。NaTaO3結晶の窒化に関しては,今年度の実験をベースに詳細な分析・解析を進め,結晶面と窒化の関係を明らかにする。昨年度に引き続き,計算的手法による窒化機構の解明も進める。今年度までに実施したTi系酸化物の窒化に関する計算手法を活用する。
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