2017 Fiscal Year Research-status Report
層状オキシハライド導入による希土類系高温超伝導体薄膜の組織制御と機能改善
Project/Area Number |
17K14814
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
元木 貴則 青山学院大学, 理工学部, 助手 (00781113)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 希土類系高温超伝導体薄膜 / 有機金属塗布熱分解法 / 層状オキシハライド |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類系高温超伝導体(RE123)は90 K級の臨界温度を有することから液体ヘリウムフリーでの高磁場発生コイル応用などに向けて世界的に研究開発が進められている。しかし、他の超伝導体と比較して高特性であるが、とりわけ高コストであるために広範な材料応用には至っていない。これまでの研究から、原料への微量のハロゲン元素添加によって薄膜の均質性や配向度が劇的に改善することを見出している。本研究課題では、超伝導膜内に生成する層状オキシハライドがどのように超伝導相の配向を補助しているかを解明し、それを制御することで高速・低コスト・高特性な薄膜の作製指針を確立することを目的とした。 本年度はまず、ClもしくはBr添加したRE123薄膜を作製し、超伝導特性におよぼす影響を調べた。これらのハロゲン添加により層状オキシハライドが膜中に生成し、超伝導相の結晶成長を促進するために大幅に臨界電流特性が改善されることを明らかにした。特に、ペロブスカイト型酸化物(BaMO3)を形成するZr,Sn,Hfといった金属とハロゲン元素を共添加することにより、フッ素フリーMOD法と呼ばれる高速・低コストプロセスを用いても、当初の目標値である液体窒素温度における臨界電流密度 3 MA/cm2を超える特性を示す薄膜の作製に成功した。 また、層状オキシハライド薄膜の作製にも並行して取り組んでおり、成膜条件の系統的な探索やTEMを用いた断面観察を通じて結晶成長機構の解明にも取り組んでいる。 以上の薄膜は単結晶基板上への成膜であるが、実用化を視野に入れた複合金属基板上への展開にも既に着手している。金属基板上においてもClやBrといったハロゲン添加が高速短時間成膜に極めて有効であることを見出しており、引き続きさらなる高特性化に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要に示すように高速・低コストなフッ素フリーMOD法と呼ばれる手法を用いて、ハロゲン元素と金属元素を共添加した希土類系高温超伝導体薄膜を作製し、当初の目標値を超える臨界電流密度を既に達成した。また、次年度の研究課題であった長尺化可能な複合金属基板上への薄膜作製の展開に既に着手しており、ハロゲン添加が高速・短時間といった成膜の工業プロセス化に極めて有効であることを見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
系統的な条件探索や熱処理条件の最適化を行うことで、長尺化可能な金属基板上への高特性な薄膜作製の展開を引き続き推進する。本研究を進める中で明らかにした層状オキシハライドBa2Cu3O4X2(X = Cl, Br)の結晶成長促進機構の解明に取り組むとともに、このオキシハライドやその類縁物質をテンプレートとした新たな超伝導薄膜線材構造の開発にも注力したい。
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Causes of Carryover |
国際学会参加旅費・登録費を若手研究者向けの学内補助金から充当することができたため、旅費の支出を当初の予定よりも抑えることができたため。 研究遂行に不可欠な単結晶基板の価格が当初よりも高騰しており、次年度は物品費が想定よりも必要になると考えられる。繰越分は主に基板等の物品費に充当する。
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Research Products
(10 results)