2017 Fiscal Year Research-status Report
圧縮成形の高速化と疲労強度の最大化を実現する繊維強化複合材料の開発
Project/Area Number |
17K14821
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (80589490)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 炭素繊維強化プラスチック / 面外引張特性 / デジタルイメージコリレーション / ひずみ分布計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素繊維強化熱可塑性プラスチックの信頼設計において最も重要な面外引張特性に着目して,その疲労強度の発現メカニズムを解明するため,まず面外引張方向基本特性の検出を試みた.そのために,湾曲部を有するL字型試験片の4点曲げ試験によって湾曲部の半径方向に引張変形を与えるという,標準規格試験法を応用し,その湾曲部の応力ひずみ関係を直接取得するための計測システムの構築を検討した. その過程で,湾曲部の面外引張応力および半径方向の分布は,湾曲部形状・寸法と4点曲げ方式によって与える曲げモーメントから計算で求められるが,面外引張ひずみはひずみゲージなどの従来型センサーではゲージ範囲で平均化されるために分布を求めることが困難であることが分かった.そこで,DIC(デジタルイメージコリレーション)という画像解析ツールによって湾曲部全域のひずみ分布を測定する方法を検証したところ,曲げモーメントの増加に伴って湾曲部半径方向(面外方向と同一)中央付近が最大となり,山なりにひずみが増加する挙動をつかむことができた. 一方で,画像の撮影には画素数の大きい市販のデジタルカメラを用い,湾曲部を拡大するために望遠レンズを用いたが,レンズの焦点距離などの関係でピクセル当たり解像度(空間分解能)には制限があることが分かり,また,レンズ収差などによってひずみ分布解析における精度の低下が考えられた.そこで,レンズ収差を抑制できる手法を検討した.その結果,テレセントリックレンズが有効であることが分かり計測システム改善の準備を進めた. さらに,面外引張挙動を有限要素解析によって把握できるよう,繊維周りに樹脂が存在して繊維直角方向に変形を与えるモデルを作成して数値解析を実施した.その結果,繊維周りに樹脂のひずみが集中して,最終的には樹脂そのものが破断するような挙動を再現できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
L字型試験片を用いた面外引張特性の検出において,ひずみ値の直接計測の精度が想定以上に低かったため,精度を改善するための施策を検討するのにやや時間がかかった.具体的には,デジタルカメラと拡大レンズの組み合わせにおいて試験片湾曲部を拡大撮像する際に,高い画素数のものを用いてはいるものの拡大範囲が限られ,かつ,レンズ収差の影響で取得した画像におけるピクセル解像度が低くなってしまったことが原因と考えられた.代替案としてテレセントリックレンズの活用を考案して,その準備を進めている段階である.よって,当初年度内に一度は試験しようと計画していた疲労試験までは実行することができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画から遅れた面外引張特性における応力ひずみ関係の検出については,ひずみ値の直接計測の精度を改善して再試験を実行する.それから面外挙動を明らかにする.そして,有限要素解析によって面外引張挙動が繊維周りの樹脂の塑性挙動によって支配的であるかどうか,仮説を検証して塑性構成式をベースとした樹脂破壊による強度予測の理論モデルを考案する.同時に,L字型疲労試験を実施して,サイクル数と剛性低下の関係から面外損傷進展を関係曲線によって定式化して,前述の強度予測理論モデルとの関係を求める. また,当初計画のとおり成形性の観点からは,樹脂の粘度が塑性挙動にも影響を受けるという仮説を実験的に検証,あるいは,過去文献などから説明する手法を検討する.
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Causes of Carryover |
カメラ画像による計測システムの構築に多少費用がかかった反面,計測システムの事前検証用試験片については,すでに所有していたものでまかない,また,それに想定以上の時間を要したため,当初予定していた試験片の準備が後ろ倒しになり,必要な試験片加工費が全くかからなかった.一方で,次年度は計測システムの計測精度向上を検討しており,そのシステム構築に新たな設備・装置を導入し組み込む必要がある.現在,メーカーに見積もり依頼中であり,次年度は当初計画以上の物品費がかかることが分かっている.よって,次年度に持ち越して使用予定である.
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