2017 Fiscal Year Research-status Report
自動車のマルチマテリアル化に向けた異材接合部の耐衝撃性支配因子の解明
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17K14822
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高嶋 康人 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (50397692)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 動的負荷 / 断熱変形 / 異材継手 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,自動車などに用いる耐衝撃性に優れた異材接合部の実現に向けて,衝撃変形時の慣性や衝撃破壊に対して異材接合ゆえの力学的不均一性がもたらす影響を十分に理解することを目的として,弾性定数は同じであるが強度差のある軟鋼と高強度鋼をクラッド接合した継手を用い,異種鋼板接合部の衝撃時のひずみ分布と温度分布の可視化及び破壊特性の調査に取り組んだ。接合部が衝撃負荷で破壊するまでの過程を詳細に把握するため,高速カメラや高速サーモグラフィを用いて接合部の変形や温度場を連続して撮影した。 H29年度の取り組みでは,異種鋼板クラッド接合継手を用いて動的3点曲げ試験を実施し,サーモグラフィによる温度場の高速撮影で接合部の高速変形時の温度上昇をとらえ,その可視化に成功した。この実験によると,高速変形中のクラッド接合界面で温度が非対称に分布しており,接合部の軟らかい側での温度上昇が顕著であった。また,塑性仕事による発熱と高速変形中の熱伝導を考慮した動的数値解析モデルによる計算を実施し,この継手が衝撃負荷を受けた際の塑性変形挙動と温度上昇を解析した。この解析で求めた異種鋼板クラッド接合部の温度場はサーモグラフィで計測した結果と概ね一致しており,計算に用いたモデルの妥当性が確認できた。この検討により異種鋼板接合部の衝撃時の温度上昇量は接合部の力学的不均一性の影響を受けていることがわかった。 これまでに得られた成果について,2018年7月に開催される国際会議で発表を計画しており,既に論文投稿を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に計画していたとおり,高速撮影可能な赤外線カメラを導入して,それを用いた温度場の観察によって異種鋼板クラッド接合部の高速変形時の温度上昇をとらえ,その可視化を達成した。また,接合部の温度上昇を動的に解析するための材料構成式について,様々な引張速度や温度で引張試験を実施してひずみ速度・温度依存性を反映させることに取り組んだ。それをふまえた動的数値解析モデルで計算した温度分布はこのカメラによる高速撮影で計測した結果とほぼ一致しており,計算手法の妥当性が確認できた。これにより動的数値解析で異種鋼板接合部の温度場や高速変形を再現でき,衝撃負荷で破壊するまでの過程を詳細に把握することが可能となった。 以上の理由より,本研究の進捗状況は順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに妥当性を検証した動的数値解析モデルを用いて,1) 異種鋼板の強度差の影響のパラメトリック解析と2) 異種金属継手のヤング率差の影響の解析に取り組み,異材接合部の材料特性の不均一性が衝撃変形や試験片温度変化にもたらす影響を解明することを進める。衝撃負荷によって破壊するまでの過程を把握し,接合部の衝撃破壊を支配する要因について検討する。 また,熱伝導解析と動的応力解析の連成による複雑な繰り返し計算が必要となるため計算処理コストが高くなるが,この計算を加速させるために,次のような工夫を予定している。 1. 並列化処理による計算速度の向上 2. マススケーリング解析の有効性の検証と,それによる計算速度の向上 以上の方策に取り組み,本研究の目的達成に向けて推進する。
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Causes of Carryover |
当初に計画していた高速撮影可能な赤外線カメラの導入において,他の研究費と合算することで予算範囲内で購入したことによる。また,カメラ導入の時期が年度後期となったため,学外での実験実施時期を次年度に繰り越すことになり,旅費や人件費が発生しなかった。なお,次年度には汎用コードによる数値解析を並列化するための追加ライセンス料に用いることを予定している。
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