2019 Fiscal Year Research-status Report
ODSフェライト鋼におけるナノ酸化物粒子の照射下オストワルド成長促進機構の解明
Project/Area Number |
17K14828
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大野 直子 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40512489)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / イットリウム複合酸化物 / アンチサイト欠陥 / イオン照射 / 酸化物粒子成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.酸化物固有の照射下安定性評価 Y2Ti2O7、Y4Zr3O12およびY4Al2O9(YAM)を対象としてYと(Ti, Al, Zr)の位置を交換させた場合の格子安定性を、第一原理計算における構造緩和によって調査した。単位胞に1個のアンチサイト欠陥を導入するとY4Zr3O12においてその割合は2/7、YAMにおいては1/12となる。Y4Zr3O12とYAMにおいては絶対零度・k-pointを2×2×1に簡略化して行った構造緩和でも元の結晶構造が保たれた。Y2Ti2O7においては割合を1/8に固定し、異なる3つの格子位置で作成したアンチサイト欠陥、及び1つのフレンケル欠陥を想定した構造緩和を行った。k-point を3×3×3で計算した結果、元の結晶構造が保たれた。 2.ODS鋼中酸化物粒子の耐オストワルド成長特性評価 Fe-12Cr-(0, 0.21Ti, 0.3Zr)-0.5Y2O3(以下、単位は全てwt.%)、Fe-12Cr-5Al-0.5Ti-0.5Y2O3(Al-ODS)について、673K, 最大33dpaまでのFeイオン照射を行った。Fe-12Cr-6Al-0.5Ti-0.4Zr-0.5Y2O3(AlZr-ODS)については他の合金と同様の条件の他に873K, 最大318dpaまでのイオン照射を行った。673Kで照射したAlZr-ODSの深さ方向の損傷勾配に沿って12dpa, 17dpa, 33dpaに相当する深さでHRTEM観察を行った結果、12dpa以上の照射域においては酸化物粒子と合金母相の境界は不明瞭で、酸化物粒子の構造が判別できなかった。H30年度の結果と併せて673K, 773K, 873Kの照射を比較すると、低温において数密度の低下が著しく、特に2nm以下の小さな粒子が消失していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.酸化物固有の照射下安定性評価 酸化物自体の耐照射性は順調に評価できているといえるが、計算資源の乏しさから一度の計算に膨大な時間がかかっており、アンチサイト欠陥量を増やした場合の構造緩和の調査に踏み切れていない。また、YAlO3(YAP)とY2Zr2O7のH30年度の計算結果の原子量の設定に誤りを発見したため、これらについては計算のやり直しが必要である。
2.ODS鋼中酸化物粒子の耐オストワルド成長特性評価 H29年度に作製した0.5Al-ODSにTiのコンタミが発見されたため、急遽、Al添加材を信頼と実績のあるFe-12Cr-5Al-0.5Ti-0.5Y2O3(Al-ODS)押出材に変更して照射実験を行ったところ、得られた結果は0.5Al添加の場合と真逆になった。いずれの試料においても酸化物粒子はY-Ti複合酸化物とY-Al複合酸化物が混在しているが、Al-ODSに含まれるY-Al複合酸化物の量は0.5Alに含まれる量よりも遥かに多い。今後照射したAl-ODSの酸化物粒子サイズ分布と酸化物種類の関係について精査をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
R2年度の計画は以下の通りである。 1.酸化物固有の照射下安定性評価 YAP, Y2Zr2O7の耐照射特性を第一原理計算の構造緩和により再度評価する。酸化物と鉄母相の界面が存在するモデルにおいて、アンチサイト欠陥が導入される場合の界面エネルギーの変化を調査する。計算資源の確保のため、大型計算機の利用を検討する。 2.ODS鋼中酸化物粒子の耐オストワルド成長特性評価 全ての照射試験の中で一番順調に進んでいる12Cr-6Al-0.5Ti-0.4Zr-0.5Y2O3(AlZr-ODS)を中心とした検討を行う。現状で一番有力と考えられるNelsonらの析出物からのはじき出しによる元素溶解モデルを採用し、これまでの照射結果について、酸化物構成元素のマトリクス中での固溶原と拡散係数を基にして酸化物粒子の安定性を評価する。
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Causes of Carryover |
3月の学会旅費として使用予定であったが、コロナウィルスの影響で予稿配布のみとなったため、3月末に返金が生じた。請求した助成金と合わせて、今年度は外部計算機資源の利用料、イオン照射実験の旅費、分析装置利用料の支払いに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)