2017 Fiscal Year Research-status Report
Fatigue prediction of dual-phase microstructure by data-driven approach
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17K14832
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白岩 隆行 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10711153)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機械学習 / 結晶塑性 / 空間相関関数 / 二相鋼 / 疲労 / 繰返し応力ひずみ曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、結晶塑性論に基づく有限要素解析と種々のデータ駆動型アプローチ(空間相関関数や主成分解析、機械学習)を組み合わせることで、組織から疲労特性を予測する手法を提案することである。本年度は、(1)精度のよい微細組織モデルの提案と、(2)疲労き裂発生の予測手法の提案を行った。 (1)精度のよい微細組織モデルの提案:フェライト鋼、パーライト鋼、フェライト・パーライト鋼について、SEM観察を行い、EBSD解析を行った。粒形状は、各粒を楕円形に近似し、長径a、アスペクト比a/b、傾きθの3パラメータを統計的に取得した。結晶方位は、方位分布関数(ODF)によって評価した。粒形状をメッシュモデルで表現する際には、ボロノイ分割を使用することが多いが、疲労き裂発生では局所的な応力が重要である。そこで、より詳細に粒形状を再現するために、重み付きボロノイ分割の式に異方性を導入することで、上述の3パラメータ(a, a/b, θ)を反映可能な分割手法を提案した。また結晶方位はMelchiorと Delannayが提案した手法を用いて、ODFが再現されるように割り当てた。 (2)疲労き裂発生の予測手法の提案:まず、各材料について丸棒試験片を作成し、ひずみ制御で一定振幅低サイクル疲労試験を行い、破断寿命の1/2サイクルのヒステリシスループから、繰返し応力ひずみ曲線を得た。結晶塑性有限要素解析を試験片全体にわたって行うことは、計算コストの点から現実的ではない。そこでグローバルモデルの構成則にはMises の降伏関数を用いたJ2流れ則を、サブモデルの構成則には結晶塑性モデルを用いた。J2流れ則では背応力を組み込みバウシンガー効果を考慮した。結晶塑性モデルでは、Hutchinsonらが提案した式を用いた。算出された各すべり系のせん断塑性ひずみを、疲労き裂発生則に代入し、き裂発生寿命と発生位置を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)精度のよい微細組織モデルの提案と、(2)疲労き裂発生の予測手法の提案を行う予定であった。(1)については、重み付きボロノイ分割に異方性を導入することで、精度のよい微細組織モデルを提案することができた。またMelchiorと Delannayが提案した手法を用いて、ODFが再現されることを確認することができた。(2)については、結晶塑性モデルを用いて、繰返し応力ひずみ曲線を計算し、実験から得られた繰返し応力ひずみ曲線とフィッティングすることで、結晶塑性パラメータを逆解析的に求めることができた。計算では市販の有限要素解析ソフトAbaqusと、MaxPlanck研究所開発のDamaskをもとに、バウシンガー効果を導入できるように修正することで、より再現性の高い応力ひずみ曲線を得ることができた。またき裂発生の観察には、従来からレプリカ法が使用されてきたが、本研究では、より効率的にき裂発生サイクル数を取得するために、試験機コントローラからのトリガ信号を用いて、繰返し波形上の任意のタイミングで、マイクロスコープによる表面観察を行った。疲労試験片にはピコ秒レーザによる微小穴や、極浅い切欠きを導入することで、疲労き裂発生カ所を限定し、観察を容易にする工夫をした。以上の実験的な工夫をすることで、き裂発生則のパラメータ決定に有用なデータを得ることができた。結晶塑性有限要素解析では、 前述の微細組織モデルをサブモデルに利用することで、各すべり系の塑性ひずみ分布を計算した。3次元のモデルでは、計算コストの点で研究がうまく進まなかったが、すべり面を2次元に投影した線を考えることで、2次元の有限要素モデルで、3次元の結晶方位を考慮できるように工夫した。これにより効率的に疲労き裂発生予測を行えることが示された。以上から、非常に順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、(3)空間相関関数をベースとした機械学習の適用と、(4)極値解析による疲労寿命予測を行う。 (3)空間相関関数をベースとした機械学習の適用:様々な二相分布(ランダム、層状、クラスタ状、粒界析出型など)を持つ組織モデルを多数作成し、CPFEMにより、き裂発生寿命・進展寿命の結果を得る。ただし、上記の計算は、研究用コンピュータを用いても数日の計算時間を要すると考えられ、計画どおりにデータが集まらないことも考えられる。その場合は、単純なメッシュモデルを用いて、繰返し応力ひずみ曲線の予測を行う。さらに二相組織の分布を3次元の空間相関関数を用いて数学的に表現する。さらに、主成分分析により次元を縮約する。主成分分析では、特性につながる重要な情報が削除されないように、繰返し応力ひずみ応答との相関を考慮する。計算から得られたデータを学習データとして、多層ニューラルネットワークに適用することで、組織と繰返し応力ひずみ応答を対応づける。ただし、隠れ層の数はデータ数を考慮して決定する。さらに、実験データをテストデータとして用いて、予測の信頼性を評価する。また、ペトリニューラルネットのように分岐を含む学習機構を利用することで、二相組織の強化機構をデータベースから抽出する。二相組織の疲労特性を向上させる機構として、従来から報告されているき裂分岐や塑性誘起き裂閉口と比較する。 (4)極値解析による疲労寿命予測:実材料の疲労寿命を予測するためには、試験片全体のシミュレーションが必要となるが、CPFEMでは計算コストの点から、全体の3次元解析は現実的ではない。そこで、計算された疲労き裂発生寿命・進展寿命を、各種の極値分布にフィッティングすることで、最大値や最小値を見積もり、確率分布を含む疲労曲線(P-S-Nカーブ)をプロットする。
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[Presentation] 高強度鋼のマルチスケール介在物観察に基づく疲労寿命予測2018
Author(s)
坂口 了太, 白岩 隆行, Pornthep Chivavibul, 榎 学, 山下 典理男, 横田 秀夫, 松井 穣, 児玉 俊文, 風間 彰, 野村 航大, 高松 弘行
Organizer
日本鉄鋼協会2018年春期講演大会
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