2017 Fiscal Year Research-status Report
ナノサイズ分散相の結晶構造制御によるチタン基超弾性合金の機能劣化抑制法の開発
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17K14833
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
篠原 百合 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30755864)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マルテンサイト / 形状記憶合金 / チタン合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が開発したβ基Ti合金は,従来の形状記憶合金の2倍以上の広い温度範囲にわたって擬弾性が発現する.予備実験により判明しているこの合金の特徴は以下の通りである.①冷却によりマルテンサイト変態が起こらない②室温における応力負荷前の相はβ相 (立方晶) である.応力負荷によってα″マルテンサイト (斜方晶) が誘起し,除荷でβ相に逆変態する③試験温度の上昇に伴いマルテンサイト誘起応力が減少する温度域(140K~室温)と増大する温度域(室温~)が存在する.③のマルテンサイト誘起応力の特異な温度依存性は,擬弾性のメカニズムが試験温度によって異なる可能性を示唆している.本年度は種々の試験温度におけるサイクル変形時の擬弾性挙動について調査した. 各試験温度に対して圧延後に溶体化を施した試験片を準備し,140~380Kの範囲で引張試験を行った.試験温度にかかわらず,マルテンサイト誘起応力はサイクル回数の増大とともに減少し,5サイクル目以降ではほぼ一定の値となった.1サイクル目と5サイクル目のいずれでも,マルテンサイト誘起応力は前述した③の特異な温度依存性を示した.一方,逆変態応力は1サイクル目では試験温度の上昇に伴い減少し,5サイクル目では試験温度に依存せずほぼ一定の値となった.試験温度の上昇に伴い逆変態応力が上昇する挙動が見られなかったのは,試験温度の上昇とともに塑性変形が導入されたことが原因と考えられる. 以上の結果より,マルテンサイト誘起応力と逆変態応力では試験温度依存性に違いがあることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各温度領域におけるマルテンサイト誘起応力と逆変態応力のサイクル特性が明らかになったが,試験温度の上昇とともにサイクル特性の評価が困難になっていった. 原因は,試験温度の上昇に伴い当初の想定以上に塑性変形が導入されたためである.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は母相の内部組織解析を各試験温度領域で行うとともに,母相内に分散しているω相のシャッフリング量を定量解析する予定である.シャッフリング量の定量解析は原子対相関関数(PDF)解析により行い,現在,本解析用の粉末試料を準備中である.
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Causes of Carryover |
当初解析ソフトを購入することを予定していたが,ソフトの機能が研究に必要な要求を満たしているか検討する必要があり,購入を見送ったため. 当該助成金にて熱処理装置を購入予定である.
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