2017 Fiscal Year Research-status Report
強ひずみ加工組織制御によるマグネシウム合金の腐食メカニズムの解明と高耐食化
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17K14836
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
湯浅 元仁 同志社大学, 理工学部, 助教 (70635309)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マグネシウム合金 / 腐食 / 強ひずみ加工 / 組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、Mg-5.5wt%Zn-0.6wt.%Zr合金(ZK60合金)に対し、ECAP加工を行い、その加工パス回数、加工前後の熱処理が材料組織と耐食性に及ぼす影響を評価した。すなわち、受入れ材をそのままECAP加工したAs-ECAP材、受入れ材を溶体化処理した後ECAPしたST-ECAP材、さらにST-ECAP材をECAP加工後に熱処理した、ST-ECAP-HT材の3種類の試験片を準備し、組織観察、耐食性の評価に供した。 その結果、どの試験片に対しても、ECAP加工パスの回数が増加すると耐食性は劣化することを確認した。この耐食性の劣化は、加工前後に熱処理を行うことにより低減させることができた。すなわち、塩水浸漬試験による腐食減量は、AS-ECAP材 > ST-ECAP材 > ST-ECAP-HT材の順となり、加工前後にECAPをした試験片の耐食性が最も改善された。分極曲線による電気化学測定の結果、ST-ECAP材はAs-ECAP材と比べて、カソード反応が抑制されていること、ST-ECAP-HT材は、ST-ECAP材に比べると、カソード反応は促進されているものの、アノード反応が大きく抑制されていることが確認できた。 組織観察の結果、これら3種類の試験片の結晶粒径には大きな差はなく、金属間化合物の分布・サイズが変化していることがわかった。よって、金属間化合物と母相の局部電池による腐食、さらには、加工により導入される転位密度の低減により耐食性が改善できることを見出した。電気化学測定の結果と合わせて考えると、本実験系においては、転位密度の低減が耐食性改善にもっとも有効であることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度途中にECAP加工用の金型にトラブルがあり、当初試験を実施予定であった、加工温度を変えたECAP加工や、純マグネシウムを対象としたECAP加工を実施することができなかった。そのため、当該年度は、同一条件でECAP加工されたZK60合金に集中し、試験前後の熱処理による組織変化に着目して研究を実施した。その結果、加工条件は変化させずとも、熱処理により大きく材料組織や耐食性を変化させることができる、という一定の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の金型のトラブルはすでに収束したため、今後は加工条件を変えたECAP加工をZK60合金に行うこと、純マグネシウムのECAP加工を実施する。また、今年度導入予定の集合組織測定用アタッチメントにより、これらマグネシウム合金の集合組織の情報を得て、マグネシウム合金の組織と耐食性の関係について、さらに深く考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、集合組織測定用アタッチメントを2019年度予算で購入予定であったが、予算減額のため、19年度の予算では購入できない見積もりであった。19年度に該物品を購入するため、18年度の予算を節約したから、残額が生じた。
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Research Products
(3 results)