2017 Fiscal Year Research-status Report
水挙動に着目した全固体アルカリ燃料電池モデルの構築
Project/Area Number |
17K14857
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大柴 雄平 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10708530)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 全固体アルカリ燃料電池 / アニオン伝導性電解質膜 / 水挙動 / 電池モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、全固体アルカリ燃料電池(SAFC)の高性能化に向け、SAFCの水挙動、特に電解質膜内の水移動を定量的に理解するための水移動モデルの構築を目指す。SAFCにおける水移動モデルを構築し、モデル計算に必要な、アニオン伝導性電解質膜の各種物性値を実験により求める。水移動モデルをSAFC用パラメータを導入した燃料電池モデルに組み込むことで、電池性能の予測を行う。アルカリ型では、酸型のNafion®に代表されるような標準膜材料が存在しないが、モデル計算から電解質膜の材料改良方向性を提案する。 今年度は、まずアルカリ型に展開する前段階として、作製に成功していた、厚さ6μmの超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)多孔質基材にスルホン酸基容量が市販のNafion 211(厚み25μm)より2倍近く高いEW500パーフルオロスルホン酸 (PFSA)ポリマーを充填した細孔フィリング薄膜の電池特性を評価した。細孔フィリング薄膜を用いた場合、Nafion 211と比較して、高温低湿度域で高い電池性能を示した。電池試験と同時に膜抵抗を測定したところ、細孔フィリング薄膜の膜抵抗は、高電流密度領域でも低いことが明らかとなった。また、細孔フィリング薄膜の水素クロスオーバー量は、薄膜であるにもかかわらず、Nafion211と同程度の値を示した。すなわち、薄膜化とスルホン酸基の高密度化により、高温低湿度条件下でも水移動が促進し膜抵抗が低減され、さらに、機械強度の強いUHMWPE基材を用いることで、EW500 PFSAポリマーの膨潤が抑制された結果、水素クロスオーバー量が抑えられたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の予定と異なり、酸型の燃料電池用細孔フィリング薄膜の燃料電池特性評価を行った。細孔フィリング薄膜は、高温低湿度条件下でも高い電池性能を示した。これは、薄膜化とスルホン酸の高基密度化により、水移動が促進しかつプロトン伝導度が向上したためであると考えられる。さらに、機械強度の高い基材を用いることで、充填ポリマーの膨潤が抑制され、薄膜であるにもかかわらず水素クロスオーバーが抑制されたと考えられる。今年度得られた電池作製技術及び結果は、SAFCの電解質膜を設計する上で重要な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、酸型の燃料電池用細孔フィリング薄膜について、各種耐久性試験(乾湿サイクル、OCV保持)を行うことで、実作動条件下での細孔フィリング薄膜の耐久性を評価する。また、電解質ポリマーを充填する基材の空孔率、膜厚、素材などを変化させた時の膜・燃料電池特性を評価し、基材の各種物性が電池性能に与える影響を考察する。また、酸型の電解質膜で得られた知見を元に、当初予定していたSAFC用細孔フィリング膜を作製し、水移動モデルの計算に必要な、アニオン伝導度、水分収着量、水透過係数、電気浸透係数の算出を行う。
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Causes of Carryover |
今年度投稿中の英語論文1報の追加校正分を見越していたが、必要なくなったため、次年度への繰り越しをした。この分は、次年度、別刷り・カバー印刷代と併せて使用していく。
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Research Products
(14 results)