2019 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋前駆細胞分化に高度に特化した細胞外マトリックスの開発
Project/Area Number |
17K14865
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
眞下 泰正 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (20707400)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋前駆細胞 / 多能性幹細胞 / 細胞足場 / 分化促進 / 組換えタンパク質 / ナノ構造体 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋再生医療において、多能性幹細胞(ES/iPS細胞)から骨格筋前駆細胞(SMPC)を誘導するプロセスの高効率化は喫緊の課題である。本研究では、SMPC生産プロセスにおける主要な制御因子である細胞外マトリックス(ECM)成分に着目してプロセス効率化を目指す。当該年度では、前年度から引き続きSMPCへの分化誘導・維持培養に適した細胞足場タンパク質の開発を進めつつ、足場タンパク質とナノ構造体を組み合わせたマトリックス(細胞足場)の構築・機能評価を進めた。 構築したRGD配列を融合した足場タンパク質は、ビトロネクチンやマトリゲル等の一般的に用いられる標準足場タンパク質と殆ど同等の細胞接着能を示した。しかし、多能性幹細胞からSMPCへの分化促進能については、標準足場タンパク質との明確な違いは観測されなかった。一方、ECM構造を模したナノ構造体上に足場タンパク質をコートして分化誘導を実施したところ、細胞はコロニー状の形態を形成し、SMPC遺伝子マーカー発現量が10~20倍に増加した。コロニー状に培養するとSMPCへの分化促進が観測されることは先行研究で示されており、当研究でも結果が一致した。当研究で開発したナノ構造体はエレクトロスピニング法という非常に安価な手法により作製しているため、先行研究と比較し開発したマトリックスは経済的に非常にインパクトのある材料といえる。また、先行研究では「コロニー状の培養が何故分化促進に働くのか」の機構について全く触れられていない一方、当研究では当マトリックスの分化促進機構解明に向け今後は分子生物学的解析を進め、SMPC分化促進において細胞外マトリックスが果たす役割の一端を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究より、フィブロネクチン由来のRGD配列、α6β1インテグリン結合能を有するラミニン由来配列が、多能性幹細胞からSMPCへの誘導を促進することが報告されている。前年度までに、タンパク質安定化に機能する骨格タンパク質にRGD配列を付加した融合タンパク質の構築を終えているため、今年度は先ずこの融合タンパク質の評価を進めた。しかしながら、優れた細胞接着能を示したものの、分化促進能については期待していた効果が得られなかった。従って、この配列の使用を諦めラミニン由来配列との融合タンパク質の構築に舵を切った。具体的には、α6β1インテグリンへの結合特異性が高いことが報告されているペプチド配列(IKVAV、NPWHSIYITRFG、TWYKIAFQRNRK)との融合タンパク質を作製し機能評価を進めた。 ナノ構造体と足場タンパク質の機能評価は、これらのマトリックスを用いてSMPCへの分化誘導を実施し、qPCRによりPax7(SMPCに特徴的な遺伝子マーカー)の発現量を測定する簡易スクリーニングにより行った。また、SMPC以降の骨格筋分化過程(筋芽細胞、筋管細胞、筋繊維)におけるナノ構造体と足場タンパク質の影響も評価(それぞれの分化過程に特徴的な遺伝子マーカーを指標(Myod1, MyoG, MyHC)にqPCRを実施)した。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫蛍光染色を実施してタンパク質レベルにおける分化状態を評価し、qPCRによる遺伝子発現変化の結果と比較検証を行う。この検証の結果を基にSMPC誘導に最も適した細胞足場条件を決定する。最後に、当人工マトリックスがSMPC分化においてどのように機能しているかについての分子生物学的理解を深めるため、RNA-seqを実施し遺伝子ネットワークへの影響を俯瞰的に評価する。以上の実験が終了次第、実験結果を纏め学会発表、学術論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定した材料に期待していた効果が観測されなかったため、材料に関する研究戦略を一部変更して作製を一からやり直したため研究進捗に遅れが生じ次年度使用額が生じた。 次年度使用額は主に材料評価のアッセイ費用と学会発表、学術論文投稿費用に使用する予定である。
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