2017 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌の細胞外小胞と自己集合体形成に着目した有用物質生産プロセスの開発
Project/Area Number |
17K14869
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
尾島 由紘 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (20546957)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フロック / 大腸菌 / 細胞外小胞 / 細胞外分泌 / グリセロール |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 細胞外小胞OMVsの産生向上とタンパク質生産 大腸菌に対して,ペリプラズム移行シグナルを持つプラスミドを用いて,ペリプラズムでのヒトインターフェロンの生産を行った.ペプチドグリカン層の構造維持に関与するnlpI遺伝子の欠損株は,野生株と比較して約7倍程度のOMVs産生量を示した.さらに野生株とnlpI欠損株が排出したOMVs内に含まれるインターフェロン量をウエスタンブロットにより確認したところ,野生株では検出されなかったがnlpI欠損株では培養液中濃度に換算して1μg/L程度で検出された.以上の結果より,OMVs産生量の増加に伴うインターフェロンの細胞外分泌が確認できた.ただし,分泌濃度は依然として低くかったため,外膜脂質の外層と内層の非対称性を高めるyrbE遺伝子の欠損株との二重欠損株を作製したところ,野生株と比較して約30倍のOMVs産生量を示した. 2. フロック形成機構の解明とサイズ制御技術の構築 当初予定していたフロック形成過程のタイムラプス観察に関しては,静置条件下でのフロック形成が困難であり,一度中断した.一方で,これまでに大腸菌のフロック形成はOMVs産生量の増加に起因しており,セルロース生合成関連遺伝子bcsBの過剰発現株ならびにペリプラズムプロテアーゼをコードする遺伝子degPの欠損株で誘因されることが明らかとなっている.またフロック全重量の約60%がタンパク質であることから,これら2種類のフロックのタンパク質組成をSDS-PAGEならびに質量分析で比較したところ,その構成タンパク質はほとんど同じであった.またdegP欠損株が形成するフロックのほうがサイズが小さいことも明らかとなった.さらに興味深い結果として,degP欠損株のフロック形成過程において,グリセロールを添加することによりフロック形成量が10倍近く増加することを突き止めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OMVsの産生が促進される欠損株などを使用することで,モデルタンパク質としてのインターフェロンの細胞外分泌がOMVs産生量に伴って増加することを明らかにしており,二重欠損株などへ展開することで更なる分泌量の増加が期待される.またフロック形成に関しても,フロック形成のトリガーとなる物質として,グリセロールが重要であることを発見し,今後のフロック形成機構の解明の手掛かりを見つけることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 細胞外小胞OMVsの産生向上とタンパク質生産 現在までのところ,OMVs産生量の増加に伴うインターフェロンの細胞外分泌が確認できている.さらに,ペプチドグリカン層の構造維持に関与するnlpI遺伝子と外膜脂質の外層と内層の非対称性を高めるyrbE遺伝子の欠損株との二重欠損株が,野生株と比較して約30倍のOMVs産生量を示すことを明らかにしている.今後は,この二重欠損株を用いてインターフェロン生産を行い,OMVs現象のタンパク質分泌ツールとしての有用性を実証する.さらに,OMVsによって分泌されたインターフェロンの精製を行い,培養細胞を用いた細胞アッセイにより,生理活性の保持の有無についても確認を行う予定である. 2. フロック形成機構の解明とその応用技術の開発 これまでのところ,ペリプラズムプロテアーゼをコードする遺伝子degPの欠損株で誘引される大腸菌フロックは,そのサイズが小さく,さらにグリセロールを添加することで濃度依存的に形成量が増加することを明らかにしている.グリセロールによるフロック形成の促進機構を明らかにすることで,フロック形成機構そのものの理解につながると考えている.そこで,今後はグリセロールの有無におけるフロックのタンパク質組成を質量分析等により比較することで,明らかにしていきたい.また,グリセロールの培養液中への添加効果としては,基質としての利用,粘性の増加,忌避物質としてのストレス応答の誘引などが考えられ,類似化合物の添加効果などを詳細に確認することで,フロック形成促進の主要因を解明する.
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Causes of Carryover |
物品費に関しては、およそ計画通りの使用額となった。旅費とその他に関しては、計画よりも少ない使用額となったが、こちらは公費による補填が可能であったためである。次年度使用金額に関しては、主に物品費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)