2017 Fiscal Year Research-status Report
ピルビン酸バイパス/リサイクル技術を拡張した芳香族化合物合成プラットホームの開発
Project/Area Number |
17K14870
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
野田 修平 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30710131)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Escherichia coli / 芳香族化合物 / ピルビン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年末にCOP21で締結されたパリ協定では、2030年度までにCO2の26%(2013年度比)を削減することが求められており、低炭素循環型社会の実現は急務であると言える。微生物菌体触媒を用いた芳香族化合物生産は、バイオリファイナリーにおける重要な分野の一つである(世界のバイオ化学品市場総覧, 2013, 株式会社シード・プランニング)。近年注目されているシェールオイル革命により、今後、メタン等の炭素数の少ないエネルギー・化成品原料コストは低下すると考えられる。よって、芳香族化合物のような、より複雑な構造をした化合物の需要が急激に高まってくると予想されている。微生物を用いた芳香族化合物生産に関しても様々な報告が存在するが、産業利用を考えた場合に大きなブレイクスルーが必要とされている現状がある。大腸菌やコリネ型細菌を用いた芳香族化合物の生産において、芳香族アミノ酸合成経路の最適化等の側面から生産収率向上が検討されている(Gosset G, Curr Opin Biotechnol., 2009. 20: 651-658.)。しかしながら、解糖系近傍の前駆体から生産されるイソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類がほぼ理論収率近く生産される一方、芳香族モノマーについては収率面で大幅な改善の余地がある(理論収率の1/3以下)。本研究では、ピルビン酸バイパス/リサイクル技術という独自技術を適用した微生物を用いて芳香族化合物を高収率で生産可能なプラットホームの開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、大腸菌の代謝経路を改変し、ピルビン酸の合成をサリチル酸生産時のみに制限することにより、グルコースからのサリチル酸収率を50%にまで引き上げることに成功した。現在、サリチル酸生産時に生じるピルビン酸の行方をコントロールするための技術開発を行なっている。また、生産時にピルビン酸の生成を伴う化合物の例として、グルコースからマレイン酸を合成することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
グルコースからの収率を更に引き上げるため、様々な化合物の生産に本技術を適用するため、目的化合物生産時に生じるピルビン酸の行方をコントロールすることが重要である。引き続き、培養初期にはピルビン酸を細胞増殖に、定常期には物質生産に回すことのできるスイッチの開発を行なっていく予定である。
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