2017 Fiscal Year Research-status Report
能動的な電位勾配形成による無電極静電加速プラズマスラスタの研究
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17K14874
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大塩 裕哉 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80711233)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホローカソード / プローブ計測 / 無電極プラズマ加速 / 進行磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画に従いホローカソードと呼ばれる電子源のプラズマ変動特性ならびに進行波磁場を用いた新しい無電極プラズマ加速手法の検証実験を進めた。 ホローカソードのプラズマ中に生じる電位勾配の原因解明のために、ラングミュアプローブを用いてカソード-アノード間のプラズマ分布ならびに変動特性を各種動作パラメータに対して取得した。共同研究者の実施している数値解析との比較のための定常的なプラズマ分布を取得した。また、プラズマ密度に対応するイオン飽和電流の変動計測を行った結果、不安定な放電状態であるプルームモードにおいて数十kHzの振動を確認した。この振動は、その周波数からイオン音波不安定性または電離不安定性であると考えられる。一方、安定動作であるスポットモードにおいてこの振動は検出されなかった。このことから、不安定動作時の変動原因がこのプラズマの振動に関わっていることが示唆される。現在、各種動作パラメータは配置において、この変動特性がどのように変わるかを調査中である。 進行磁場によって捕捉された電子を加速させることで、イオンと電子の速度差に起因する電位勾配を形成させる無電極プラズマ加速手法の実証を目指して、この加速法の実験室モデルを製作した。理論解析において、10kW級の電力でエネルギー吸収効率65%を見積、スラスタの効率として十分高い性能が期待できることを示した。また、7つのコイルにそれぞれ90°の位相差の電流を流すことで進行磁場を形成する実験室実証用の小規模スケールモデルを構築した。磁気プローブを用いた計測により、進行磁場を実際形成されることを確認した。加えて、別に生成したプラズマへ初めて進行磁場を印加する実験に成功した。進行磁場の影響は現在調査中であるが、プラズマ発光調査において進行磁場印加時にプラズマ発光強度が変化、進行磁場の影響を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大電流ホローカソードのプラズマ計測による動的特性理解と新しい無電極プラズマ加速としての進行磁場加速の実験的検証を目的として研究を進めてきた。 研究代表者が以前に製作した50A級ホローカソードを用いてプローブ計測を実施している。共同研究者の数値解析との比較のための放電電流、流量に対して網羅的かつ定常的なアノード-カソード間のプラズマ分布の計測に成功した。動的特性についても予測していたイオンスケールの不安定性に起因すると考えられる数十kHz程度のプラズマ変動が、プルームモードと言われる不安定な放電のモードでのみ生じることを明らかにした。一方で、Spotモードと呼ばれる安定動作モードでは不安定性は確認されず、この動作モードでの動作が寿命の観点では有効であることを改めて示した。しかし、共同利用設備の使用可能期間が予定より少なくなってしまい、詳細な動的特性評価は多少の遅れが生じている。 新しい無電極加速法として進行磁場によるプラズマ加速手法の実験的実証に向けて実験設備・計測システムの構築を行った。電子の熱速度程度の進行磁場を発生可能な装置を製作し、磁気プローブにより各位置の高周波磁場の位相差を計測することを進行磁場が形成されていることを示した。その後、プラズマ中に始めて進行磁場を印加することに成功した。加えて、進行磁場印加によりプラズマ発光に変化が生じ、進行磁場がプラズマへ影響を与えていることを確認したと共に、進行磁場によってもプラズマが生成されることが示唆された。しかし、進行磁場を生成するための装置ならびにプラズマ生成用装置が一部破損してしまったため、今後使用予定の計測システムの構築し、進行波磁場なしでのプラズマ特性取得と高周波磁場とプラズマとの干渉についての基礎データの取得を行い、本研究で狙っている動作パラメータにおいて高周波磁場が十分プラズマとカップリングすることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
ホローカソードの実験では、動的特性ならびに不安定性現象について、不安定性が有意に生じる動作モードが明らかになった。この時間スケールは数十kHzのイオンスケールであることから、本研究で予測しているイオン音波不安定性であることが示唆される。現状では、イオン飽和電流の振動からの議論のみであり、電子温度、電子数密度、プラズマ電位とそれぞれの変動特性を計測できるようにトリプルプローブなどの多電極プローブ手法を用いて、各パラメータの変動特性を様々な動作パラメータについて計測する。得られたパラメータから、各種不安定の特性を理論的に算出し、実験で確認されている不安定性がどの不安定性に対応するかを明らかにする。加えて、イオンの不安定性によりプラズマ中に電位勾配が生じることが知られており、電子とイオンのパラメータと電位勾配の関係性を明らかにし、無電極加速法へ応用するための知見を得る。 無電極進行磁場加速の実験においては、これまでにプラズマに進行磁場を印加するシステムの構築ならびに初期印加実験に成功したが、装置の破損により進行磁場の実験は中断してしまった。今年度予算にて早急にシステムの修復を行い、進行磁場加速実験を再開する。まずは、進行磁場印加時のプラズマパラメータの変化とイオンマッハ数計測によりプラズマが加速されているかの確認を行う。本研究で構築装置は、最大3kWかつプラズマへの吸収効率20%以上が期待できる条件で動作可能であり、このプラズマ計測により進行磁場によるプラズマ加速の実証が可能であると期待できる。また、各動作パラメータを変更した際の特性を取得することで、理論通りの性能が得られるかの確認を行い、この加速法の優位性を示す。加速法の優位性が確認できれば、推力の直接計測へ向けた装置の改良ならびに直接計測による推力増加により加速法の実験的実証を行う。
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