2017 Fiscal Year Research-status Report
Extra fine oscillating heat pipe for innovative three-axis flexible thermal strap
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17K14879
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
岩田 直子 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (70751139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 熱制御 / サーマルストラップ / フレキシビリティ / 自励振動ヒートパイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙機の多様化・高度化する性能要求に応えるため、振動や熱変形を衛星構体に伝えず排熱のみを実現するフレキシブルかつ高熱伝導なデバイスが渇望されている。本研究では、通常の半分以下(内径0.4mm以下)の配管から構成される極細自励振動ヒートパイプ(OHP)を新規開発し、熱輸送及び機械性能の両方に優れた特性を発揮する軽量かつ高性能な3軸フレキシブルサーマルストラップを開発する。本研究により、次世代宇宙機のより高度な排熱要求に応え、宇宙機のみならず自動車や家電機器等の熱設計自由度を飛躍的に向上させる。 初年度である本年度は、内径0.4mm以下の細管でOHPを製作し、その熱輸送特性を取得するとともに課題の洗い出しを行った。内径0.36mm/外径0.52mmと、内径0.2mm/外径0.5mmの2種類のステンレス配管を用いて、長さ150mm、7ターンのOHPを試作した。OHPに作動流体として代替フロンHFC-134aを封入し、OHPの設置角度を変えて動作試験を行ったところ、OHPを水平状態に設置した場合はヒートパイプとして動作しなかったが、加熱部が下になるようにして45度及び90度に傾斜させて設置した場合はヒートパイプが起動し加熱部から冷却部へ熱輸送が行われることが確認できた。極細配管でのOHPの製作及び動作の確認という成果は得られたが、宇宙のように重力のアシストがないような環境でも動作させられるOHPにすることという課題が明らかとなった。 この課題を解決するために、気液の流れが一方向になるようにOHPの配管途中に逆止弁を挿入させる。内径0.4mm以下の極細配管に逆止弁を挿入したOHPの例はなかったため、逆止弁を新規に開発し、電鋳技術によって試作することができた。逆止弁は二相流での流量性能確認を行ったのち、X線透過検査にて内部構造を可視化し損傷等がないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通りに内径0.4mm以下の複数の配管のOHPを製作し試験により熱特性を確認することができており、研究はおおむね順調に進展している。熱特性試験の結果、OHPは重力のアシストにより内部の作動流体が冷却部から加熱部に戻りやすい状態では問題なく動作するが、重力のアシストがない水平状態では動作しないという課題が明らかとなった。この課題は研究当初から予測されており、作動流体の一方向の流れを誘起するために逆止弁が必要になることが想定されていたため、極細配管OHPの製作と並行して極細配管による逆止弁の試作検討も実施していた。通常の半分以下の内径の配管で逆止弁を実現させる必要があったため、製作は難航したが試作を完了させ逆止弁の流量特性を確認することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は以下の通り、おおむね当初の計画に沿って進める。 平成30年度は、微小重力環境下でもヒートパイプとして動作し高い熱輸送能力を発揮できる極細OHPで構成されるサーマルストラップを製作し、熱輸送性能と機械的性能の評価を行う。そのために、まず平成29年度に試作した逆止弁を必要個数分だけ製作したのちOHPに挿入し、逆止弁付きOHPを製作する。電鋳技術での逆止弁の製作と並行して機械加工によるOHPの配管製作を実施し、両方が完成したところで逆止弁をOHP用配管に電鋳で接合させる。サーマルストラップの製作を平成30年9月頃までに完了させたのち、残りの期間で試験による評価を行う。OHPは2体以上製作し、すべてに対してまず大気中における熱輸送性能試験を行った後、効率的に研究を進めるために、動的剛性及び静的剛性の評価と熱真空環境下での熱輸送性能評価をそれぞれ別個体にて実施する。 研究の最終年度となる平成31年度は、サーマルストラップに対して、打上時の振動・衝撃や軌道上での熱サイクルなどの耐環境性能を試験にて検証し、宇宙機に適用できるサーマルストラップであることを示す。
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Causes of Carryover |
研究計画時点では計上していなかった逆止弁の試作とその内部構造の確認のためのX線透過検査に必要な費用を捻出するため、研究計画時点で設備備品費として計上していたOHPへの作動流体封入時に必要となる真空ポンプや、熱輸送性能試験を行う際に必要となる直流安定化電源、データロガー、パソコンなどを所属機関の他の研究者が使用していたもの等を流用させることとした。逆止弁の試作に必要な費用が想定よりも小さく、X線透過検査と足し合わせた費用は計上していた設備備品費の合計よりも小さかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、もともと平成30年度分として請求していた助成金と合わせ、逆止弁の製作及び逆止弁つき極細配管OHP(サーマルストラップ)を製作する費用に充てる。
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Research Products
(1 results)